
今回は、『等加速度直線運動(とうかそくどちょくせんうんどう)』について学んでいきましょう。
その名の通り、「物体がずーっと一定の加速度で直線上を進む運動」ですよ。
現実の運動では、例えば自動車は加速したり減速したりストップしたり、時刻によって加速度はバラバラですよね。
でも、そんな複雑な運動をいきなり扱うのは大変です。
なので、「加速度は一定」というシンプルな直線運動から考えていきますよ。
「えーっと、等速直線運動とごっちゃになっちゃいました・・・」
はじめはみんな混乱するんですよ。
ここで違いを理解しておきましょうね。
『等速直線運動』は、直線上を同じ向きに同じ速度で進む運動です。
『等加速度直線運動』は、直線上を同じ向きに同じだけ加速しながら進む運動なんですね。
加速しているので、等加速度直線運動では速度は変化していますよ。
『等加速度直線運動』は、力学分野の最初の山場です!
しっかり理解していきましょうね。
目次
等加速度直線運動
『等加速度直線運動』は、「物体がずーっと一定の加速度で直線上を進む運動」でしたね。
「ずーっと一定の加速度」とは、物理学的にどういう意味なんでしょう?
どこの時刻でも一定の加速度、とは?
そう、「平均の加速度」も「瞬間の加速度」も同じ ということなんですよ。
ですから、『等加速度直線運動』では、単に「加速度」について考えれば良いのです!
図1 等加速度直線運動
加速度を求める公式は、加速度a=(速度の変化量Δv)÷(時間Δt)でしたね(忘れていたらこちらで復習!)。
a(加速度”acceleration”の頭文字)は加速度、v(速度”velocity”の頭文字)は速度を表しますよ。
Δ(デルタ)は差分や変化量を表すギリシャ文字ですね。
例えば、図2の等加速度直線運動の加速度を求めてみましょうか。
x軸正の向きにボールが転がっていますよ。
図2 ボールの等加速度直線運動
時刻t0=0 sに原点0を速度v0=1.0 m/s(メートル毎秒)で通過したボールが、
t1=1.0 sでv1=3.0 m/s、x1=2.0 m
t2=2.0 sでv2=5.0 m/s、x2=5.0 m
t3=3.0 sでv3=7.0 m/s、x3=10 m
t4=4.0 sでv4=9.0 m/s、x4=17 m
と加速しながらx軸正の向きに進んでいますね。
時刻t0=0 sでの速度v0のことを、『初速度(しょそくど)』と言いますよ。
v0は0 m/sの場合もありますが、このボールの運動では初速度v0=1.0 m/sですね。
等加速度直線運動では、どの区間で加速度を求めてもOKです。
t1=1.0 sからt4=4.0 sの区間から加速度を計算しますね。
加速度a=(速度の変化量Δv)÷(時間Δt)=(9.0 m/s-3.0 m/s)÷(4.0 s-1.0 s)=2.0 m/s2(メートル毎秒毎秒)
確かに、1.0 sごとに速度は2.0 m/sずつ増えていますね。
理解を深めるために、この運動をグラフにしてみましょう!
等加速度直線運動のグラフと速度を求める公式
図2のボールの運動をv–tグラフにすると、こうなりますよ。
図3 図2の等加速度直線運動のv–tグラフ
初速度v0=1.0 m/sは縦軸の切片になっていますね。
また、1.0 sごとに2.0 m/sずつ加速=加速度2.0 m/s2であることが、v–tグラフの傾きから分かりますよ。
等加速度直線運動では、v–tグラフの傾き=加速度aなんですね。
そして、加速度a>0、つまり正の向きに加速する場合のv–tグラフは右上がりの直線になるわけです。
では、等加速度直線運動のv–tグラフについて、物理学的にまとめてみましょう。
「x軸正の向きに等加速度直線運動をしている物体が、時刻t=0に原点0を速度v0で出発し、時刻tのとき速度vになった」としますよ。
この物体の加速度aは、
a=\(\frac{{v}-{v}_{0}}{t-0}\)
式変形すると、
v=v0+at
初速度v0、加速度aで等加速度直線運動している物体について、時刻tでの速度vを求める式になりました。
この式のv–tグラフはこうなりますよ。
図4 等加速度直線運動のv–tグラフ
図3とそっくりで、縦軸の切片が初速度v0、傾きが加速度aの直線のグラフになっていますね。
速度vを求める公式を丸暗記しただけでは使いこなせませんよ。
v–tグラフとセットで意味を理解してくださいね。
さて、等速直線運動のv–tグラフと横軸で囲まれた面積は、x0(t=0での位置)からの変位Δxにあたるので、v–tグラフからは直線上の位置も分かる、のでしたね(詳しくはこちら)。
もちろん、等加速度直線運動のv–tグラフからも同じように直線上の位置が求められますよ。
等加速度直線運動のグラフと位置を求める公式
等加速度直線運動のv–tグラフと横軸で囲まれた面積は、x0(t=0での位置)からの変位Δxになりますよ。
そこから、時刻tでの直線上の位置xを求めてみましょう。
その前に、「変位」と「位置」がごっちゃになっている人はいませんか?
ちょっと復習しておきましょう。
変位と位置の違い
直線上を運動する物体が、時刻t=0に位置x0を通過し、その後時刻tでは位置xに着いたとしますよ。
時刻t=0から時刻tまでの変位Δx=x-x0と、時刻tでの位置xはこのような関係になりますね。
図5 直線上を運動する場合の変位Δxと位置x
時刻tでの位置xと変位Δx=x-x0が一致するのはx0=0のときだけです!
「変位」と「位置」は違う、ということをしっかり覚えておきましょうね。
さて、v–tグラフの話に戻りましょう。
v–tグラフから求める変位と位置
図4のv–tグラフと横軸で囲まれた面積は、こうなりますよ。
図6 v–tグラフと横軸で囲まれた面積=変位Δx
v–tグラフと横軸で囲まれた面積は、色のついた台形の面積ですね。
この面積は、上部の三角形の面積\(\frac{1}{2}\)at2と下部の長方形の面積v0tを足し合わせたものです。
そして、この面積が時刻t=0から時刻tまでの変位Δx=x-x0ですから、
面積=Δx=x-x0=v0t+\(\frac{1}{2}\)at2
t=0に位置x0を初速度v0で通過し、加速度aで等加速度直線運動している物体が時刻tに達する直線上の位置xは、
x=x0+v0t+\(\frac{1}{2}\)at2
時刻tでの直線上の位置xを求める式になりましたね。
この式もv–tグラフとセットで意味を理解してくださいね。
もし忘れても、v–tグラフから導き出すことができますよ。
ちなみに、この式を使って図2のボールの運動をx–tグラフにしたのが図7です。
図7 図2の等加速度直線運動のx–tグラフ
式には2次関数が含まれるので、時刻tが増えると位置xが急激に増えます。
時間が経つにつれて、ギュイーンと加速して進む様子が良く表されていますね。
ここで、等加速度直線運動のv–tグラフから分かることを図にまとめておきましょう。
図8 等加速度直線運動の時刻tでの速度vと位置x
さて、ここまでに2つの公式が出てきましたね。
これらの公式を組み合わせて、3つ目の公式が導けますよ。
速度vと位置xの関係を表す公式
3つ目の公式は、
v2-v02=2a(x-x0)
この式は、v=v0+atとx=x0+v0t+\(\frac{1}{2}\)at2の2式から、tを消去して求められたものなんですね。
つまり、「等加速度直線運動の速度vと位置xの関係」を数式で表しただけで、物理の現象的な意味は特にありません。
なので、何を表しているのかイメージしづらい式なんですね。
時刻tが分からないときに使うと便利ですよ。
この式の導き方を示しておきますね。
等加速度直線運動のv–tグラフと3つの公式について、理解できましたか?
さて、ここまでは何となく加速度が正(a>0)の感じで話を進めてきました。
(もちろん、公式は加速度a、初速度v0、速度v、時刻t=0での位置x0、時刻tでの位置xが負でも成立しますよ)
しかし、加速度にも正負があり、さらに負の加速度には2パターンある、というお話をこちらでしましたね。
等加速度直線運動で負の加速度の場合はどうなるのか、詳しく見ていきましょう。
負の等加速度直線運動とは
直線運動では、通常、v0の向きをx軸の正の向きに取りますよ。
そして、加速度の正負によって等加速度直線運動はこのように変わるのです。
v0>0のとき、
- 加速度a>0の場合は、加速しながらx軸正の向きに運動する
- 加速度a<0の場合は、減速しながらx軸正の向きに運動し、その後ターンして、加速しながらx軸負の向きに運動する
それぞれ、こんなイメージになりますよ。
青い矢印は動く経路を、赤い矢印は速度の大きさと向きを表します。
図9 加速度の正負による等加速度直線運動の違い
a>0の場合は納得ですが、a<0の場合は「は!?」ってなりませんか?
イメージとしては坂道を上がるボールなど、現実にある物理現象ですよ。
図10 坂道を上がるボール
ボールが坂道を上がる間にだんだん減速し、一瞬だけv=0になって、逆向きに動き出したらどんどん加速していきますね。
加速度a<0の場合もv–tグラフを描くと運動の様子が分かりやすくなりますよ。
初速度v0(>0)、加速度a(<0)で等加速度直線運動している物体のv–tグラフはどうなるでしょうか?
v–tグラフの傾き=加速度a(<0)ですから、毎秒aずつ速度が減少する右下がりの直線になりますね。
図11 等加速度直線運動(a<0)のv–tグラフ
速度v>0、v=0、v<0の領域がありますね。
もう少し詳しく見ていきましょう。
図12 等加速度直線運動(a<0)のv–tグラフ
v>0の領域では、正の向きに運動していますね。
でも、vの大きさは減っていくので、減速しながら正の向きに運動しているわけです。
そして、v=0になる時刻で静止しますよ。
その後、v<0の領域に入ります。
v<0ですから、これまでとは逆の負の向きに運動していますね。
でも、vの大きさは増えていくので、加速しながら負の向きに運動しているわけです。
そして、加速度a<0のv–tグラフと横軸で囲まれた面積からは、何が読み取れるでしょうか?
それは、減速しながら正の向きに運動する間の変位と、加速しながら負の向きに運動する間の変位なんですよ。
図13 等加速度直線運動(a<0)のv–tグラフの面積と変位の関係
v>0の領域にある緑色の三角形の面積は、減速しながら正の向きに運動する間の変位になるのですね。
一方、v<0の領域にある紫色の三角形の面積は、加速しながら負の向きに運動する間の変位になるわけです。
変位が分かれば、直線上の位置も求められますね。
v–tグラフは最強です!
それでは、色々な例題を4問解いて理解を深めましょう!
例題で理解!
(1)物体の加速度は何m/s2か。
(2)0 s≦t≦6.0 sの間の移動距離を求めよ。
図14 物体のv–tグラフ
v–tグラフが出てきたら、こんなところに注目して情報を読み取ると良いですよ。
- 初速度v0はいくらか
- 速度v>0(正の向きの運動)かv<0(負の向きの運動)
- 速度vは一定(等速直線運動)か右上がりの直線(加速度が正の等加速度直線運動)か右下がりの直線(加速度が負の等加速度直線運動)か
このv–tグラフからは、次のことが読み取れますね。
- 初速度v0=1.0 m/s
- 速度v>0なので、x軸正の向きに進む運動
- グラフが右上がりの直線なので、加速度が正の等加速度直線運動
図にすると、こういう運動ですよ。
図15 例題1の物体の運動のイメージ
さっそく解いていきましょう!
問題文に出てくる数値は有効数字2桁ですから、答えも有効数字2桁ですよ。
(1)物体の加速度は何m/s2か。
加速度は、v–tグラフの傾きから求められますね。
a=(速度の変化量)÷(時間)=(4.0 m/s-1.0 m/s)÷(6.0 s-0 s)=0.50 m/s2
(2)0 s≦t≦6.0 sの間の移動距離を求めよ。
v–tグラフと横軸で囲まれた面積は、t=0 sでの位置からの変位でした。
t=0 sでの位置からの変位の絶対値は、移動距離になりますね。
つまり、下図で色をつけた台形の面積が、求めたい移動距離になりますよ。
図16 v–tグラフの面積と移動距離
台形の面積=\(\frac{(上底+下底)×高さ}{2}\)ですから、
S=(1.0 m/s+4.0 m/s)×(6.0 s)÷2=15 mですね。
次は、x–tグラフとv–tグラフの2本立てで解きますよ!
下図に、物体Aの位置x [m]と時刻t [s]の関係を表すx–tグラフと、物体Bの速度v [m/s]と時刻t [s]の関係を表すv–tグラフを示した。
(1)物体Aについて、t=1.0 s、t=3.0 s、t=6.0 sでの位置(x座標)と速度を求めよ。
(2)物体Bについて、t=1.0 s、t=3.0 s、t=6.0 sでの位置(x座標)と速度と加速度を求めよ。
図17 (左)物体Aのx–tグラフ (右)物体Bのv–tグラフ
見た目はそっくりなグラフが2つ並んでいますが、問題文をよく読んでくださいね。
左の図は物体Aのx–tグラフ、右の図は物体Bのv–tグラフですよ。
グラフの見た目はそっくりでも縦軸が違いますから、物体Aと物体Bの運動は全く違うんです!
問題を解きながら2つの物体の運動について考えていきましょう。
さて、(1)(2)では、色々な時刻での物体A、Bの位置xと速度vについて聞かれていますよ。
物体Aの位置xはx–tグラフから、物体Bの速度vはv–tグラフから読み取れますね。
物体Aの速度vと物体Bの位置xについてはどう求めれば良いでしょうか?
速度vはx–tグラフから計算できますし、位置xはv–tグラフから求まる移動距離から計算できますよね。
では、グラフから情報を読み取りながら解いていきましょう!
(1)物体Aについて、t=1.0 s、t=3.0 s、t=6.0 sでの位置(x座標)と速度を求めよ。
物体Aのx–tグラフを見てくださいね。
グラフはx≧0の範囲にある、つまり、位置は0 mまたは正の値しか取らないということですよ。
【t=1.0 sのとき】
0 s≦t≦2.0 sの区間を見てみましょう。
図18 物体Aのt=1.0 sでの位置と速度
t=1.0 sはt=0 sとt=2.0 sのちょうど真ん中ですね。
ですから、t=1.0 sの位置xも0 mと6.0 mのちょうど真ん中であるx=3.0 mになりますよ。
物体Aは、時刻t=0 sに原点を出発した後、t=2.0 sでx=6.0 mに移動し、その間のグラフは右上がりの直線ですね。
つまり、0 s≦t≦2.0 sでは一定の速度で動く等速直線運動をしているわけです。
t=0 sでx=0 m、t=2.0 sでx=6.0 mですから、0 s≦t≦2.0 sでの等速直線運動の速度vは、v=(6.0 m-0 m)÷(2.0 s-0 s)=3.0 m/sですね。
【t=3.0 sのとき】
2.0 s≦t≦4.0 sの区間を見てみましょう。
図19 物体Aのt=3.0 sでの位置と速度
t=3.0 sはt=2.0 sとt=4.0 sのちょうど真ん中ですから、x=6.0 mですね。
そして、2.0 s≦t≦4.0 sでは位置x=6.0 mのままです。
なので、物体Aは静止している、つまり、速度は0 m/sになりますよ。
【t=6.0 sのとき】
4.0 s≦t≦8.0 sの区間を見てみましょう。
図20 物体Aのt=6.0 sでの位置と速度
t=6.0 sはt=4.0 sとt=8.0 sのちょうど真ん中です。
ですから、t=6.0 sの位置xも0 mと6.0 mのちょうど真ん中であるx=3.0 mになりますよ。
4.0 s≦t≦8.0 sではt=8.0 sでx=0 m(原点)に移動し、その間のグラフは右下がりの直線です。
つまり、4.0 s≦t≦8.0 sでは一定の速度で最初とは反対向きに移動する等速直線運動をしているのですね。
t=4.0 sでx=6.0 m、t=8.0 sでx=0 mですから、4.0 s≦t≦8.0 sでの等速直線運動の速度vは、v=(0 m-6.0 m)÷(8.0 s-4.0 s)=-1.5 m/sとなります。
というわけで、答えをまとめると、
- t=1.0 sのとき、物体Aの位置はx=3.0 m、速度は3.0 m/s
- t=3.0 sのとき、物体Aの位置はx=6.0 m、速度は0 m/s
- t=6.0 sのとき、物体Aの位置はx=3.0 m、速度は-1.5 m/s
物体Aのv–tグラフを描くと、物体Bの運動との違いが良く分かりますよ。
図21 物体Aのv–tグラフ
物体Aの運動の様子は、こんな感じですね。
図22 物体Aの運動の様子
物体Aは、0 s≦t≦2.0 sでは、3.0 m/sでx軸正の向きに等速直線運動してx=6.0 mの位置に到達し、2.0 s≦t≦4.0 sではその場で静止し、4.0 s≦t≦8.0 sでは1.5 m/sでx軸負の向きに等速直線運動するのですね。
次は、物体Bについて見ていきましょう。
(2)物体Bについて、t=1.0 s、t=3.0 s、t=6.0 sでの位置(x座標)と速度と加速度を求めよ。
物体Bのv–tグラフを見てくださいね。
グラフはv>0の範囲にある、つまり、速度は正の値しか取りませんよ。
物体Bはどの時刻でもx軸正の向きに運動しているわけですね。
では、速度、加速度、位置の順に求めていきましょう!
【t=1.0 sのとき】
0 s≦t≦2.0 sの区間を見てみましょう。
図23 物体Bのt=1.0 sでの速度と加速度
t=1.0 sはt=0 sとt=2.0 sのちょうど真ん中ですね。
ですから、t=1.0 sの速度vも0 m/sと6.0 m/sのちょうど真ん中であるv=3.0 m/sになりますよ。
物体Bは、時刻t=0 sに初速度v0=0 m/sで出発した後、t=2.0 sでv=6.0 m/sになり、その間のグラフは右上がりの直線ですね。
つまり、0 s≦t≦2.0 sでは一定の割合で速度が増えていく等加速度直線運動をしているわけです。
t=0 sでv=0 m/s、t=2.0 sでv=6.0 m/sですから、0 s≦t≦2.0 sでの加速度aは、a=(6.0 m/s-0 m/s)÷(2.0 s-0 s)=3.0 m/s2ですね。
次は、位置を求めましょう。
物体Bの情報はv–tグラフだけなので、t=1.0 sでの位置は直接読み取れませんね。
さて、v–tグラフと横軸で囲まれた面積は、(t=0 sの位置)からの変位を表すのでした。
物体Bはt=0 sで原点にいますから(x0=0)、t=0 sの位置(原点)からの変位は、そのままx軸上の位置になりますよ。
図24 t=0 sの位置からの変位と位置xの関係
つまり、v–tグラフと横軸で囲まれた面積=位置xというわけです!
というわけで、t=1.0 sでの位置xは、下図で色をつけた三角形の面積になりますよ。
図25 物体Bのt=1.0 sでの位置
t=1.0 sでの位置x=(3.0×1.0)÷2=1.5 mですね。
【t=3.0 sのとき】
2.0 s≦t≦4.0 sの区間を見てみましょう。
図26 t=3.0 sでの速度と加速度と位置
t=3.0 sはt=2.0 sとt=4.0 sのちょうど真ん中ですから、v=6.0 m/sですね。
そして、2.0 s≦t≦4.0 sでは速度v=6.0 m/sで一定です。
なので、物体Bは等速度運動をしている、つまり、加速度は0 m/s2ですよ。
t=3.0 sでの位置は、色をつけた台形の面積=(1.0+3.0)×6.0÷2=12 mです。
【t=6.0 sのとき】
4.0 s≦t≦8.0 sの区間を見てみましょう。
図27 t=6.0 sでの速度と加速度と位置
t=6.0 sはt=4.0 sとt=8.0 sのちょうど真ん中です。
ですから、t=6.0 sの速度vも0 mと6.0 m/sのちょうど真ん中であるv=3.0 m/sになりますね。
4.0 s≦t≦8.0 sではt=8.0 sでv=0 m/sになって静止し、その間のグラフは右下がりの直線です。
つまり、4.0 s≦t≦8.0 sでは一定の割合で速度が減少する等加速度直線運動をしているのですね。
t=4.0 sでv=6.0 m/s、t=8.0 sでv=0 m/sですから、4.0 s≦t≦8.0 sでの加速度aは、a=(0 m/s-6.0 m/s)÷(8.0 s-4.0 s)=-1.5 m/s2となりますよ。
t=6.0 sでの位置xは、色をつけた部分の面積ですね。
全体の台形の面積から、右端の小さい三角形の面積を引いて求めましょう。
位置x=全体の台形の面積-小さい三角形の面積=(2.0+8.0)×6.0÷2-2.0×3.0÷2=30-3.0=27 mですね。
というわけで、答えをまとめると、
- t=1.0 sのとき、物体Bの位置はx=1.5 m、速度は3.0 m/s、加速度は3.0 m/s2
- t=3.0 sのとき、物体Bの位置はx=12 m、速度は6.0 m/s、加速度は0 m/s2
- t=6.0 sのとき、物体Bの位置はx=27 m、速度は3.0 m/s、加速度は-1.5 m/s2
色々な時刻tでの位置xを計算して、物体Bのx–tグラフを描くとこうなりますよ。
物体Aのx–tグラフとは全く違いますね。
図28 物体Bのx–tグラフ
物体Bの運動の様子は、こんな感じですよ。
図29 物体Bの運動の様子
物体Bは、0 s≦t≦2.0 sではx軸正の向きに3.0 m/s2で加速する等加速度直線運動し、2.0 s≦t≦4.0 sでは6.0 m/sで等速直線運動し、4.0 s≦t≦8.0 sではx軸正の向きに1.5 m/s2で減速する等加速度直線運動をするのですね。
物体Aと物体Bの運動が全く違うことが良く分かりましたね。
x–tグラフやv–tグラフの中に、「この範囲は等速直線運動」とか「この範囲は等加速度直線運動」とか、気がついたことをどんどん書き込むと解きやすくなりますよ。
次の問題では、負の等加速度運動が2つとも出てきます!
(1)0 s≦t≦1.0 sの加速度は何m/s2か。
(2)3.0 s≦t≦5.0 sの加速度は何m/s2か。
(3)t=9.0 sのときの位置(x座標)を求めよ。
図30 物体のv–tグラフ
このv–tグラフからは、次のことが読み取れますね。
- 初速度v0=0 m/s
- 0 s≦t≦4.0 sはv>0なのでx軸正の向きに進む運動、t≧4.0 sはv<0なのでx軸負の向きに進む運動
- 0 s≦t≦1.0 sは加速度が正の等加速度直線運動、1.0 s≦t≦3.0 sは2.0 m/sの等速直線運動、3.0 s≦t≦5.0 sは加速度が負の等加速度直線運動、t≧5.0 sは-2.0 m/sの等速直線運動
v–tグラフに書き込んでおくと後から便利ですよ。
さて、解いていきましょう!
(1)0 s≦t≦1.0 sの加速度は何m/s2か。
0 s≦t≦1.0 sでの右上がりの直線ですから、加速度が正の等加速度直線運動ですね。
加速度aはv–tグラフの傾きなので、a=(2.0 m/s-0 m/s)÷(1.0 s-0 s)=2.0 m/s2です。
(2)3.0 s≦t≦5.0 sの加速度は何m/s2か。
3.0 s≦t≦5.0 sでの右下がりの直線ですから、加速度が負の等加速度直線運動ですね。
加速度aはv–tグラフの傾きなので、a=(-2.0 m/s-2.0 m/s)÷(5.0 s-3.0 s)=-2.0 m/s2です。
(3)t=9.0 sのときの位置(x座標)を求めよ。
0 s≦t≦4.0 sはv>0なのでx軸正の向きに進む運動、t≧4.0 sはv<0なのでx軸負の向きに進む運動でしたね。
つまり、t=4.0 sで物体はターンして、運動の向きが逆になったわけです。
図31 物体の運動のイメージ
このイメージから、t=9.0 sでの位置=(0 s≦t≦4.0 sの変位)-(4.0 s≦t≦9.0 sの変位)だと分かりますね。
0 s≦t≦4.0 sの変位と4.0 s≦t≦9.0 sの変位は、v–tグラフと横軸で囲まれた面積から求められますよ。
図32 v–tグラフから求める変位
0 s≦t≦4.0 sの変位は、(2.0+4.0)×2.0÷2=6.0 m
4.0 s≦t≦9.0 sの変位は、(5.0+4.0)×(-2.0)÷2=-9.0 m
これより、t=9.0 sでの位置=6.0 m+(-9.0 m)=-3.0 mとなりますよ。
次は、問題文にv–tグラフがありませんよ!
この運動が等加速度直線運動であるとして、①加速度と②物体の速度が0になるまでに運動した距離を求めよ。
(2)72 km/h(キロメートル毎時)で走る自動車が急ブレーキをかけたところ、20 m走って止まった。
自動車は等加速度直線運動したと考えると加速度はいくらか。
v–tグラフが問題にない場合は、自分でざっくり描いて運動のイメージをつかみましょう。
公式に数値を代入しても解けますが、特に負の加速度の場合は運動のイメージが無いと解き方を間違えることが多いですよ。
(1)①加速度と②物体の速度が0になるまでに運動した距離
はじめは正の向きに運動していた物体が、3.0 s後に負の向きに運動していますね。
つまり、加速度は負だということに気がついてくださいね。
ですから、v–tグラフは右下がりの直線になりますよ。
初速度v0=4.0 m/s、3.0 s後の速度v=-2.0 m/sですね。
図33 物体のv–tグラフ
①グラフの傾きが加速度aなので、a=(-2.0 m/s-4.0 m/s)÷(3.0 s-0 s)=-2.0 m/s2
速度が0になるまでの時間は、v=v0+atの公式から、0=4.0+(-2.0)tなので出発から2.0 s後ですよ。
t=0 sからt=2.0 sまでの間の変位の絶対値が、速度が0になるまでに運動した距離になりますね。
つまり、下図で色をつけた三角形の面積です。
図34 v–tグラフと速度が0になるまでに運動した距離
②速度が0になるまでに運動した距離は三角形の面積なので、4.0×2.0÷2=4.0 m
(2)自動車の加速度
問題文からは、初速度v0=72 km/hと、止まるまでの距離、つまり変位Δx=x-x0=20 mということしか分かりませんね。
まず、v2-v02=2a(x-x0)の公式を使ってみましょう。
v0=72 km/h=20 m/s、v=0 m/s、x-x0=20 mなので、0-202=2a×20より、a=-10 m/s2
加速度は初速度と反対向きに10 m/s2ですね。
この問題も、ざっくりとv–tグラフを描いて解くことができますよ。
急ブレーキをかけた=負の加速度ですから、グラフは右下がりの直線ですね。
図35 自動車のv–tグラフ
v0=20 m/sで、変位=色がついた三角形の面積=20 mですから、速度v=0になって止まるのは2.0 s後になります。
グラフの傾きである加速度a=(0 m/s-20 m/s)÷(2.0 s-0 s)=-10 m/s2というわけですね。
物体の運動のイメージが無いのに公式を使うと、大体間違えますよ。
イメージが無いから、「何の速度を求めるんだっけ?」「どこの位置やどこまでの距離を知りたいんだっけ?」が曖昧なまま問題を解き始めるからです。
等加速度直線運動の問題を解くコツは、少々面倒でもv–tグラフを描くこと、気がついたことをグラフにどんどん書き込むことですね。
そうすれば、運動のイメージがつかめるようになります。
公式を丸暗記して問題を解くよりも、格段に間違えなくなりますよ。
仕上げに、理解度チェックテストで理解を深めましょう!
等加速度直線運動理解度チェックテスト
【問1】
物体Aは初速度1.0 m/sで原点からx軸正の向きに出発して等速度で運動した。
一方、物体Bは物体Aの出発と同時に、初速度4.0 m/sで原点からx軸正の向きに出発して、その後一定の割合で減速して時刻t=8.0 sで静止した。
物体A、Bともにx軸上を運動しているものとして、以下の問いに答えよ。
(1)物体Aのv–tグラフを示せ。
(2)物体Bのv–tグラフを示せ。
(3)物体Aから見た物体Bの相対速度が0になるのは、出発してから何秒後か。
(4)物体Bが静止するまでの間に、物体A、B間の距離が最大になるのは、出発してから何秒後か。そのときの距離も答えよ。
まとめ
今回は、等加速度直線運動についてお話しました。
等加速度直線運動は、
- 物体が一定の加速度で直線上を進む運動
等加速度直線運動のv–tグラフは、
- 初速度v0が縦軸の切片、グラフの傾きが加速度aになる
- グラフと横軸で囲まれた面積は、x0からの変位になる
等加速度直線運動を表す公式は、
- v=v0+at(時刻tでの速度)
- x=x0+v0t+\(\frac{1}{2}\)at2(時刻tでの位置)
- v2-v02=2ax(vとxの関係)
負の加速度(a<0)の等加速度直線運動は、
- v>0の領域では減速しながら正の向きに進み、v<0の領域では加速しながら負の向きに進む
公式だけに頼らず、v–tグラフを使って運動の正しいイメージをつかむのが問題を解くコツですね。
特に、負の加速度のときに威力を発揮しますよ。
次回は、自由落下と鉛直投げ下ろしについてお話しますね。
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