力の合成と分解とは?力のつり合いのポイントは合力が0!

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物理学での『』の定義は、この2点でしたね。

 

  1. 物体を変形させる原因となるもの
  2. 物体の運動状態を変化させる原因となるもの

 

そして、力は大きさと向きを持つベクトル量なので、矢印で表せます。
力の大きさ・向き・作用点のことを「力の3要素」と言うのでしたね。

 

さて、力は矢印で表せるので、数学のベクトルと同じように、力を合成したり分解して考えられるようになりました。

 

なぜ、そんなことをするのでしょうか?

 

まとめて1つの力としたり、力を2方向に分けて考えた方が、力を受けた物体の運動を調べるときに便利だからなんです!

 

今回は、力の合成と分解の方法や、力のつり合いについて見ていきましょう。

 

目次

力の合成と分解

力の合成

物体に働く力は、いつもたった1つなのでしょうか?
いいえ、いくつかの力が同時に働いている方が普通ですよ。

 

あなたがペンを持ち上げるとき、ペンには下向きの重力と上向きに持ち上げる力の2つの力が働いていますね。
重い物体を2人で運ぶときも、物体はそれぞれの人から力を受けていますよ。

 

受ける力がいくつもあるときは、まとめて1つの力とすると便利なんです!

 

いくつかの力を合わせて1つの力とみなすことを『力の合成』と言います。
そして、合成してできた力のことを『合力(ごうりょく)』と言いますよ。

 

力はベクトルですから、数学で習うベクトルの合成と同じなんです。

 

例えば、1つの物体を2つの力で引っ張っているとしますね。

 

(1)2力が同じ方向または反対方向を向く場合

 

図1  2力が同じ方向を向く場合の合力

 

同じ右方向に1.0 Nと2.0 Nで引っ張っていますね。
同じ方向の2力の合力は、大きさは足し算して向きは同じです。

 

そうすると、1.0 N+2.0 N=3.0 Nの合力で右向きに引っ張るのと同じことなんですね。

 

2つの力が反対方向を向く場合はどうでしょうか?

 

図2 2力が反対方向を向く場合の合力

 

左向きに1.0 N、右向きに2.0 Nの力で引っ張っていますね。
反対方向の2力の合力は、大きさは引き算して、大きい方の力の向きに合わせるんです。

 

力の向きがそろっていない場合は、合力の向きに注意!ですよ。

 

そうすると、2.0 N-1.0 N=1.0 Nの合力で右向きに引っ張るのと同じことになりますね。

 

次は、2力が別々の方向を向く場合です!

 

(2)2力が別々の方向を向く場合

このときの合力はどうなるでしょうか?

 

図3 2力が別々の方向を向く場合

 

合力は1.0 N+2.0 N=3.0 N・・・、ではないですね。
2力の向きがそろっていない場合は、合力の向きに注意!でした。

 

力はベクトルですから、平行四辺形を使って合成できるんですよ。
こんな感じですね。

 

図4 2力が別々の方向を向く場合の合力

 

このときの合力の大きさは、平行四辺形の対角線の長さになりますよ。

 

ところで、力は合成するだけじゃなく、1つの力を2つに分解することもできるんですよ。

 

「まとめて1つの力にすると便利なのに、なぜ分解するの?」って思いますよね。

 

全ての力を分解するのではありませんよ。
「斜め方向の力」が働くときだけ分解すると、とても便利なんです!

 

力の分解

物体に力が働いて運動する様子を調べるときは、その力を鉛直方向と水平方向、または面に対して垂直方向と平行方向に分けて考えますよ。
ほとんどがこのパターンですね(「鉛直」と「垂直」の違いはこちらで確認!)。

 

  • 地面(水平面)上で静止または運動する物体に働く力⇒鉛直方向と水平方向に力を分解
  • 壁や斜面上で静止または運動する物体に働く力⇒壁や斜面に対し垂直方向と平行方向に力を分解

 

図5 色々な基準面に対する垂直方向と平行方向

 

そこに「斜め方向の力」があると、力の働き方が複雑で分かりにくいのです。
なので、ベクトルの分解のように、1つの力を平行四辺形に分けて考えますよ。

 

分解するパターンは問題に出てくるたびに説明していきますね。

 

ここでは鉛直方向と水平方向に分けてみましょう。
分解した力のことを『分力(ぶんりょく)』と言いますよ。

 

ここからは、大きさと向きを持つ力=\(\vec{F}\)(力”force”の頭文字)と力の大きさを表す記号の上に→をつけたベクトル式で表しますね。

 

大きさがFの力は\(\vec{F}\)、大きさがfの力は\(\vec{f}\)ですよ。
記号の上に→がついていなかったら、大きさだけを表します。

 

図6 力を分解する方法

 

力の合成と分解は、ちょうど逆になっているんですね。

 

最後に、合力=0になる「力のつり合い」について見ていきましょう。

 

力のつり合い

綱引きでは左右から綱を同じ力で引っ張ると綱は動きませんね。
このとき、「綱に働く力がつり合っている」となりますよ。

 

力がつり合う」とは、物体に働く全ての力の合力=0ということなんです。

 

その物体に働く左向きと右向きの力の大きさや、上向きと下向きの力の大きさが同じになって、お互いの力を打ち消し合っているんですね。

 

図7 左向きと右向きの力、上向きと下向きの力がつり合う

 

つまり、物体に何の力も働いていないのと同じ状態とみなせます。
ですから、力がつり合うと物体の運動は変化しなくなりますよ。

 

物体が静止していた場合は、力がつり合っている限りずっと静止しますね。

 

そして、ある速度で等速度運動(加速度=0)していた場合も、力がつり合っている限り等速度で運動し続けるのです。

 

例えば、自動車でアクセルとブレーキを同時に踏んで等速度で動いている場合は、アクセルで前進する力とブレーキで止める力がつり合っている状態なんですね。

 

アクセルで前進する力が大きければ加速して、ブレーキで止める力が大きければ減速するので、このときは力がつり合っているとは言えませんよ。

 

図8 力がつり合っている場合とつり合っていない場合

 

逆に考えれば、物体が静止していたり等速度運動しているときは、物体に働く力はつり合っているのですね。

 

では、良く出てくる2力のつり合いと3力のつり合いの条件を考えてみましょう。

 

2力のつり合い

2つの力がつり合って合力=0となるには、2力の向きが反対で大きさが同じだと分かりますね。
そして、図12のように2力が同じ1つの作用線上にあるのです。

 

図9 2力のつり合いの例

 

これをベクトルで力のつり合いの式として表すと、

 

\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{2}}\)=0

 

これより、\(\vec{F_{1}}\)=-\(\vec{F_{2}}\)となりますね。
力の向きが反対で大きさが同じ(F1F2)、という意味ですよ。

 

3力のつり合い

3つの力がつり合って合力=0となる、とはどう考えればいいのでしょう?

 

図13のように、力の向きが同一作用線上で反対向きなら簡単ですね。

 

図10 3力のつり合い

 

力のつり合いの式で表すと、

 

\(\vec{F}\)+\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{2}}\)=0

 

これより、\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{2}}\)=-\(\vec{F}\)となりますね。
\(\vec{F}\)は、合力\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{2}}\)とは向きが反対で大きさが同じ(FF1F2)、という意味ですよ。

 

では、図14のように1つの物体を3方向から引っ張っている場合はどうでしょうか?

 

図11 物体を3方向から引っ張る

 

3つの力がつり合うときは、作用線が1点で交わることが分かりますね。

 

3力がつり合う場合は、3力のうちの2力を合成してできた合力と残った1力とのつり合いとして考えることができますよ。

 

2力の合力と残った1力が同じ作用線上にのるようにして、つり合いを考えるのです!

 

例えば、こんな感じです。

 

図12 3力のつり合い

 

①\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{2}}\)と\(\vec{F_{3}}\)がつり合う:\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{2}}\)=-\(\vec{F_{3}}\)
②\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{3}}\)と\(\vec{F_{2}}\)がつり合う:\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{3}}\)=-\(\vec{F_{2}}\)
③\(\vec{F_{2}}\)+\(\vec{F_{3}}\)と\(\vec{F_{1}}\)がつり合う:\(\vec{F_{2}}\)+\(\vec{F_{3}}\)=-\(\vec{F_{1}}\)
のどれで考えてもかまいませんね。

 

合力=0なので、⓸のようにベクトルを順に結ぶと力の三角形ができますね。
これで力がつり合っていることが分かります。

 

力のつり合いは、力の合成だけではなく、力の分解でもよく分かりますよ。

 

力がつり合う場合は、水平方向の分力もつり合い、鉛直方向の分力もつり合っているんです。

 

水平方向と鉛直方向のつり合い

\(\vec{F_{1}}\)+\(\vec{F_{2}}\)+\(\vec{F_{3}}\)=0でつり合っている3力を水平方向のx成分と鉛直方向のy成分に分解してみましょう。

 

水平方向にx軸、鉛直方向にy軸をとると、分力はこうなりますね。

 

図13 つり合っている3力の分解

 

ごちゃごちゃしているので、水平方向のx成分だけ抜き出しましょう。
\(\vec{F_{1}}\)のx成分はF1x、\(\vec{F_{2}}\)のx成分はF2x、\(\vec{F_{3}}\)のx成分はF3xですよ。

 

図14 つり合っている3力のx成分

 

このとき、水平方向の力であるF1xF3xF2xはつり合っています。

 

右向きを正とした水平方向のつり合いの式は、(-F1x)+F2x+(-F3x)=0ですね。
なので、F2xF1xF3xとなるわけです。

 

次はy成分だけ抜き出してみますね。
\(\vec{F_{1}}\)のy成分はF1y、\(\vec{F_{2}}\)のy成分はF2y、\(\vec{F_{3}}\)のy成分はF3yですよ。

 

図15 つり合っている3力のy成分

 

このとき、鉛直方向の力であるF1yF2yF3yはつり合っていますね。

 

上向きを正とした鉛直方向のつり合いの式は、F1yF2y+(-F3y)=0です。
なので、F1yF2yF3yとなるわけです。

 

 

盛り沢山な内容でしたが、力の合成と分解の方法や力のつり合いについて理解できましたか?
力のつり合いは、色々な力の例でも出てくるので、そこでもしっかり解説していきますね。

 

慣れれば、何も難しいことはありませんよ!

 

仕上げに、理解度チェックテストにチャレンジしましょう!

 

力の合成と分解・力のつり合い理解度チェックテスト

【問1】
下図において物体に働く力(大きさはF)の分力FxFyを作図し、それぞれの大きさを求めよ。

 

 

解答・解説を見る
【解答】

Fx\(\frac{\sqrt{3}}{2}\)F
Fy\(\frac{F}{2}\)

【解説】

作図の結果から、

cos30°=\(\frac{\sqrt{3}}{2}\)\(\frac{F_{x}}{F}\)
sin30°=\(\frac{1}{2}\)\(\frac{F_{y}}{F}\)

となるので、
Fx\(\frac{\sqrt{3}}{2}\)F
Fy\(\frac{F}{2}\)

 

【問2】
下図において3つの力がつり合っているとき、力の大きさFを求めよ。

 

 

解答・解説を見る
【解答】
F=1.4 N

【解説】

鉛直下向きの力とつり合っている2つの力を水平方向のx成分と鉛直方向のy成分に分解する。

 

 

斜め上向きの2つの力のy成分は、鉛直下向きで大きさFの力とつり合う。

 

鉛直下向きを正として鉛直方向のつり合いの式を立てると、
F+(-1.0 N×cos45°)+(-1.0 N×cos45°)=0
これより、
F=2.0 N×cos45°

cos45°=\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)なので、F\(\frac{2.0}{\sqrt{2}}\) N=\(\sqrt{2}\) N=1.4 N

 

物理量が数値で与えられている場合、答えに分数や平方根\(\sqrt{}\)が含まれていてはならない。
有効数字を考えて小数で答える。
この場合は、分母に平方根があるので有理化して、\(\sqrt{}\)を有効数字2桁で表した。

 

まとめ

今回は、力の合成と分解、力のつり合いについてお話しました。

 

力の合成とは、

  • いくつかの力を合わせて1つの力としてみなすことで、合成してできた力を合力と言う

 

力の分解とは、

  • 1つの力を平行四辺形に沿って分けることで、分解してできた力を分力と言う

 

物体に働く力がつり合うときは、

  • 物体が静止していたり等速度運動している
  • 合力が0である

 

力のつり合いの式は、

  • 水平方向の力と鉛直方向の力があるときはそれぞれの方向に分けて式を立てる 

 

力のつり合いの式は、物体が受ける力と運動の関係を解き明かすのに良く使われますよ。
これから、具体的な問題を通して慣れていきましょうね。

 

次回は、重力と垂直抗力と張力についてお話しますね。
こちらへどうぞ。

 

 

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