
『等速直線運動(とうそくちょくせんうんどう)』は、「物体がずーっと一定の速度で直線上を進む運動」でしたね。
そして、問題を解くコツは、図を描いて運動のイメージをつかむこと、でした。
(詳しくはこちら)
今回は、「等速直線運動をグラフで理解する」段階に進みましょう!
「えー!グラフって難しいし、読み取り方もよく分からない・・・」
はじめは誰でもそう思いますよね。
でも、グラフが本当に難しいものなら、なぜ世界中の人々が今日もグラフを使っているのでしょうね?
それは、とても便利で、実は難しくないからなんですよ。
等速直線運動では、『x–tグラフ』と『v–tグラフ』という2種類のグラフを使っていきましょう。
目次
等速直線運動のグラフと公式
等速直線運動に必ず出てくるのが、位置x・時刻t・速度v(速度を表す”velocity”の頭文字)ですよね。
この3つをまとめて1つのグラフにすることはできないので、
- 縦軸が位置x、横軸が時刻tのx–tグラフ
- 縦軸が速度v、横軸が時刻tのv–tグラフ
という2種類のグラフを使っていきます。
x–tグラフは位置の時間変化、v–tグラフは速度の時間変化を表すグラフですね。
このグラフから、等速直線運動を表す公式も導き出せますよ。
では、それぞれのグラフについて、詳しく見ていきましょう。
等速直線運動のx–tグラフと公式
速度v>0の場合
例えば、x軸上正の向きに対して物体Aは速度2.0 m/s(メートル毎秒)で、物体Bは速度1.0 m/sで等速直線運動しているとしますよ。
時刻t=0 sでの位置x0はどちらも0 mです。
図1 物体Aと物体Bの等速直線運動(v>0、x0=0 m)
物体Aは1秒あたり2.0 m進み、物体Bは1秒あたり1.0 m進みますね。
2秒経つと物体Aは4.0m、物体Bは2.0 m進んでいきます。
つまり、時刻tと位置xは比例関係になっているわけですね!
ですから、物体Aと物体Bのx–tグラフは図2のようになります。
右上がりの直線のグラフですね。
図2 物体Aと物体Bのx–tグラフ(v>0、x0=0 m)
x–tグラフの傾き=\(\frac{縦軸の変化量}{横軸の変化量}\)=\(\frac{変位}{時間}\)=\(\frac{\Delta x}{\Delta t}\)=速度v
になっていますね!
(Δ(デルタ)は変化量を表すギリシャ文字)
傾きが急になっているほど、速度が速いわけです。
位置xと時刻tのグラフから速度vも分かるなんて、グラフって便利ですね!
また、x–tグラフが原点0を通る場合(t=0 sで位置x=0 m)は、原点0からの変位Δx=位置xに、原点0からの時間Δt=時刻tになりますよ。
つまり、速度v=(変位Δx)÷(時間Δt)から、位置x=速度v×時刻tの関係にあることが分かりますね。
これは、図2のx–tグラフからも読み取れる関係ですね。
次は、時刻t=0 sでの位置x0が0 mではない場合を考えてみましょう!
t=0 sでの位置x0=0.5 mだとすると、物体Aと物体Bの位置の時間変化は図3のようになります。
図1の位置に0.5 mを足すわけですね。
図3 物体Aと物体Bの等速直線運動(v>0、x0=0.5 m)
ですから、物体Aと物体Bのx–tグラフは図4のようになりますよ。
図2のx–tグラフの位置xをx0=0.5 mだけ上にずらしていますね。
図4 物体Aと物体Bのx–tグラフ(v>0、x0=0.5 m)
つまり、x–tグラフが時刻t=0で位置x=x0を通るとき、位置x=x0+(速度v×時刻t)の関係にあるわけです!
ここまで見てきたように、速度v>0の場合のx–tグラフは右上がりの直線でしたね。
速度v<0の場合は、どうなるのでしょうか?
速度v<0の場合
x軸上正の向きに対して、物体Aは速度-2.0 m/sで、物体Bは速度-1.0 m/sで等速直線運動しているとしますよ。
速度が負の値ですから、x軸上負の向きに進んでいますね。
時刻t=0 sでの位置x0はどちらも0 mなら、図5のようになります。
図5 物体Aと物体Bの等速直線運動(v<0、x0=0 m)
物体Aと物体Bのx–tグラフを描くと、図6のようになりますね。
v<0なので、グラフは右下がりの直線なんです。
こちらも、x–tグラフが原点0を通るとき、位置x=速度v×時刻tの関係にあることが分かりますね。
図6 物体Aと物体Bのx–tグラフ(v<0、x0=0 m)
次に、時刻t=0 sでの位置x0が0 mではない場合を考えてみましょう!
t=0 sでx0=0.5 mなら、物体Aと物体Bの位置の時間変化は図7のようになりますね。
図5の位置に0.5 mを足すわけです。
図7 物体Aと物体Bの等速直線運動(v<0、x0=0.5 m)
ですから、物体Aと物体Bのx–tグラフは図8のようになりますよ。
図6のx–tグラフをx0=0.5 mだけ上にずらしていますね。
図8 物体Aと物体Bのx–tグラフ(v<0、x0=0.5 m)
つまり、x–tグラフが時刻t=0で位置x=x0を通るとき、位置x=x0+(速度v×時刻t)の関係にあるわけです。
では、等速直線運動のx–tグラフと導き出された公式をまとめておきましょう。
図9 等速直線運動のx–tグラフと公式(位置x、時刻t、速度v)
等速直線運動のx–tグラフについて理解できましたか?
続いて、もうひとつのグラフであるv–tグラフについて解説しますね。
等速直線運動のv–tグラフ
縦軸に速度v、横軸に時刻tをとったv–tグラフは、速度の時間変化を表すグラフですよ。
ただし、等速直線運動の速度は一定なので、シンプルなグラフになります。
図10 等速直線運動のv–tグラフとx0からの変位Δxとの関係
さて、v–tグラフから、ひとつ面白いことが分かりますよ。
v–tグラフと横軸で囲まれた面積=速度v×時刻tですよね。
等速直線運動の位置xは、x=x0+vtですから、vt=x-x0となります。
x-x0=Δxは、時刻tにおける位置xのx0からの変位ですね。
なので、
v–tグラフと横軸で囲まれた面積=速度v×時刻t=x-x0=x0からの変位Δx
になるんです。
変位が分かれば、x軸上の位置も分かりますね。
v–tグラフから位置も分かるなんて、やっぱりグラフは便利です!
こうして見ると、はじめに公式があるわけではないのですね。
実験データからグラフを描き、グラフから読み取れる運動の特徴が、式として表されるわけです。
x–tグラフとv–tグラフを描けば、運動の色々な情報が分かるんですね!
ここまで学んだら、等速直線運動のイメージもできて問題も解いていけますよ。
では、一緒に例題を解いてみましょう!
公式だけ使う解き方と、グラフを描く解き方の二通りで解いてみますね。
例題で理解!
(1)物体の速度を求めよ。
(2)物体が同じ速度で運動しつづけたとき、時刻t=3.0 sにおける物体の位置xを求めよ。
図11 物体のx–tグラフ
x–tグラフは直線で傾きが一定ですから、この物体は等速直線運動をしていますね。
グラフが右上がりですから、速度が正の向きに進んでいることも分かります。
問題文やグラフに出てくる数値は有効数字2桁なので、答えも有効数字2桁ですよ。
(1)物体の速度を求めよ。
グラフの傾きが速度を表しますから、
速度=\(\frac{縦軸の変化量}{横軸の変化量}\)=\(\frac{5.0 m-1.0 m}{2.0 s-0 s}\)=2.0 m/s
速度は2.0 m/sですね。
(2)時刻t=9.0における物体の位置xを求めよ。
<公式を使う>
t=0 sにおける位置x0が0 mではないので、公式はx=x0+vtを使いますよ。
x0=1.0 m、v=2.0 m/s、t=3.0 sを公式に代入すると、位置xは、
x=x0+vt=1.0 m+(2.0 m/s)×3.0 s=7.0 m
ですから、t=9.0 sにおける位置は7.0 mですね。
<グラフを使う>
x–tグラフをt=3.0 sまでざっくりと描いてみましょう。
図12 物体のx–tグラフ
このグラフから、
t=3.0 sでの位置x=5.0 m+(t=2.0 sからt=3.0 sまでの変位Δx)
であることが分かりますね。
速度v=(変位Δx)÷(時間Δt)の関係から、Δx=v×Δtなので、
Δx=(2.0 m/s)×(3.0 s-2.0 s)=2.0 m
x=5.0 m+2.0 m=7.0 m
t=3.0 sにおける位置は7.0 mですね。
時刻t=0 sにおける位置x0が20 mであるとき、時刻t=5.0 sにおける位置xを求めよ。
速度が-2.5 m/sの1種類なので、等速直線運動ですね。
速度が負の値なので、物体はx軸負の向きに進んでいることも分かります。
位置xの単位は[m]で有効数字2桁で答えることにも注意ですよ。
<公式を使う>
t=0 sにおける位置x0が0 mではないので、公式はx=x0+vtを使いますよ。
x0=20 m、v=-2.5 m/s、t=5.0 sを公式に代入すると、位置xは、
x=x0+vt=20 m+(-2.5 m/s)×5.0 s=7.5 m
ですから、t=5.0 sにおける位置は7.5 mですね。
<グラフを使う>
x–tグラフをざっくりと描いてみましょう。
速度が-2.5 m/sと負の値なので、グラフの傾きは-2.5の右下がりの直線になりますね。
t=0 sでの位置x0は20 mであることも分かっています。
x–tグラフはこんな感じになりますよ。
必要だ!と思った情報は、グラフの中に書きこんじゃってくださいね。
図13 例題2の物体のx–tグラフ
このグラフから、t=0 sからt=5.0 sまでの変位Δx=x-x0であることが見えましたね。
つまり、Δxが分かれば、t=5.0 sでの位置xが求められるわけです。
速度v=(変位Δx)÷(時間Δt)の関係から、Δx=v×Δtなので、
Δx=(-2.5 m/s)×(5.0 s-0 s)=-12.5 m
x=x0+Δx=20 m+(-12.5 m)=7.5 m
t=5.0 sにおける位置は7.5 mですね。
グラフを描くと、運動の全体像がよく見えますよ。
一手間かかって面倒だなあ、と思いがちですが、やってみてくださいね。
「公式が出てきたから、丸暗記して使って解かなくちゃ」
と思うことはないんですよ。
公式も大事だけどグラフも描こう!
今の時点では、公式を丸暗記すると問題はサクッと解けます。
でも、これからもたーくさん公式が出てきますよね。
山のようにある公式をぜーんぶ覚えますか?
公式の丸暗記⇒多すぎて頭がごちゃ混ぜになる⇒問題が解けない
これが、悲しき「物理キライ!の法則」なんです・・・。
じゃあ、物理が得意な人、好きな人って何を考えていると思いますか?
え?ただの変人なんでしょーって?
そんなことないですよー。
例えば、私は公式を丸暗記したことがほとんどありません。
やみくもに式や単語を暗記するのは、苦手なんですよ。
でも、問題文のデータや式からグラフを描いて読み取り、運動のイメージを理解すれば、問題はバンバン解けます。
物理は実際の現象を解き明かす学問でしたね。
なので、物理で大切なのは、計算よりもグラフや式で表された運動をイメージできることです。
データからグラフが描けること、そのグラフが読めることは重要なスキルになりますよ。
そこから、数学の力を借りて、そこに隠れた法則を表す公式を導き出すわけです。
等速直線運動の公式だって、グラフから導かれていますよね。
こういうシンプルな運動の問題から、グラフを描いて考えるクセをつけておきましょうよ。
とにかく描いて慣れる!
そうすれば、難しい問題も楽に解けますし、考えることの面白さが分かってきますよ。
本質的なことほど、遠回りに見えたり慣れるまで面倒くさいものですね。
しかーし!本質が分かれば応用は無限ですよー!
それでは、チェックテストで理解を深めましょう!
等速直線運動のグラフ理解度チェックテスト
【問1】
下のグラフは、x軸上を運動する物体の位置x [m]と時刻t [s]の関係を表したものである。
(1)物体の速度は何m/sか。
(2)縦軸を速度v [m/s]、横軸を時刻t [s]として、0 s≦t≦5.0 sのv–tグラフを描け。
(3)0 s≦t≦5.0 sに物体が移動した距離を、(2)で描いたv–tグラフから求めよ。
まとめ
今回は、等速直線運動のグラフと公式についてお話しました。
等速直線運動のx–tグラフは、
- 速度v>0の場合は右上がりの直線、速度v<0の場合は右下がりの直線になる
- x=x0+vt(原点を通る場合はx0=0)で表される
等速直線運動のv–tグラフは、
- v=一定なので、横軸に平行な直線になる
- v–tグラフと横軸で囲まれた面積=v×t=x0からの変位
問題を解くポイントは、
- x–tグラフやv–tグラフから運動のイメージを理解する
「やっぱりグラフは難しいな」「グラフは意外と便利だな」
人によって色々な感想があるんじゃないでしょうか。
問題が複雑になるほど、グラフのありがたみが分かってきますよ。
今のうちに、慣れておきましょうね。
次回は、速度の合成についてお話しますね。
こちらへどうぞ。