
物理では、物体の色々な運動の法則を学びますよね。
そして、一番シンプルな運動が『等速直線運動(とうそくちょくせんうんどう)』です。
これは、「物体がずーっと一定の速度で直線上を進む運動」でしたね。
でも、現実では、「物体がずーっと一定の速度で運動」することはなかなかありません。
例えば、私たちは買い物に行く途中でゆっくり歩いたり、止まったり、小走りになったり、速度はコロコロ変わりますよね。
自動車だって、アクセルを踏めば速度が増すし、ブレーキを踏めば減速しますよ。
つまり、現実の物体の運動を正確に表すには、物体の速度の変化を考える必要が出てくるわけですね。
そこで、昔の科学者たちは、物体の速度の変化を数量的に表す方法を考え出しました。
それが、『加速度(かそくど)』なんですね。
目次
加速度とは
加速度の公式と単位
『加速度』は、読んで字のごとく、「速度が加わる」ことを表していますね。
つまり、「単位時間あたりに速度が増えたり減ったりする変化量」が『加速度』なんですよ。
まずは加速度の求め方を学んでから、具体的な例を使って理解していきましょうね。
図1のように、x軸上(右向きが正)を自動車が走っていますよ。
自動車は、時刻t1 [s]に位置Aを速度v1 [s]で通過し、その後、時刻t2 [s]に位置Bを速度v2 [s]で通過しました(vは速度を表す”velocity”の頭文字)。
図1 自動車の加速度
位置A→位置Bへ移動するのにかかった時間Δtと速度の変化量Δvは、
Δt=t2-t1(Δt>0)
Δv=v2-v1
となりますね(Δ(デルタ)は変化量を表すギリシャ文字)。
そうすると、「単位時間あたりの速度の変化量」である加速度aは、
a=\( \frac{\it{\Delta} v}{\it{\Delta} t} \)=\( \frac{{v}_{2}-{v}_{1}}{{v}_{2}-{v}_{1}} \)
と求められますよ。
加速度を表す記号はaを使います。
加速度は”acceleration”なのでその頭文字をとったものですよ。
速度の単位は、[m/s](メートル毎秒)や[km/h](キロメートル毎時)などがありましたね。
それを時間で割ったものが加速度ですから、加速度の単位は[m/s2](メートル毎秒毎秒)や[km/h2](キロメートル毎時毎時)などになりますよ。
例えば、[m/s2]という単位は、「1秒あたりに速度が〇m/s(メートル毎秒)変化する」という意味になるわけですね。
それでは、具体的な数値を入れて加速度を求めてみましょうか。
図2について、自動車が位置Aから位置Bに来たときの加速度aを求めてください。
図2 自動車の加速度
時刻t1=0 sに位置Aを速度v1=2.0 m/sで通過し、時刻t2=3.0 sに位置Bを速度v2=8.0 m/sで通過していますよ。
加速度aは、
a=(v2-v1)/(t2-t1)=(8.0 m/s-2.0 m/s)/(3.0 s-0 s)=2.0 m/s2
これは、「1秒あたり速度が2.0 m/s増えている」という意味になりますね。
こんなイメージですよ。
図3 加速度の2.0 m/s2のイメージ
「そう言えば、速度は向きを正負で表したけど、加速度には正負は無いの?」
とても良いところに気がつきましたね!
もちろん、負の加速度もありますが、2つあるので注意が必要なんです。
負の加速度は2つある!
図4の(1)(2)について、自動車が位置Aから位置Bまで動いたときの加速度を求めてみてください。
右向きを正としますね。
図4 物体の加速度
(1)では、自動車が正の向きに進みながら減速していますよ。
時刻t1=0 sに位置Aを速度v1=8.0 m/sで通過し、時刻t2=2.0 sに位置Bを速度v2=4.0 m/sで通過しました。
加速度aは、
a=(v2-v1)/(t2-t1)=(4.0 m/s-8.0 m/s)/(2.0 s-0 s)=-2.0 m/s2
続いて、(2)では、自動車が負の向きに進みながら加速していますね。
時刻t1=0 sに位置Aを速度v1=-4.0 m/sで通過し、時刻t2=2.0 sに位置Bを速度v2=-8.0 m/sで通過しました。
加速度aは、
a=(v2-v1)/(t2-t1)=(-8.0 m/s-(-4.0 m/s))/(2.0 s-0 s)=-2.0 m/s2
(1) (2)どちらも、同じ加速度-2.0 m/s2になりましたね。
このように、負の加速度には2つのパターンがあるんですよ。
- x軸正の向きに速度が遅くなる(正の方向に減速)
- x軸負の向きに速度が速くなる(負の方向に加速)
これは、問題文をよく読んで、聞かれている状況を正しく理解しないと区別できません。
特に、負の方向に加速するパターンは狙われやすいので注意しておきましょうね。
ところで、加速度は「単位時間あたりの速度の変化量」でした。
現実の運動では、速度は時刻によってコロコロ変わるので、「平均の速度」と「瞬間の速度」という考え方がありましたね。
速度がコロコロ変わるということは、加速度もコロコロ変わるはずですよね。
ということは、加速度にも「平均」と「瞬間」があるのでしょうか?
平均の加速度と瞬間の加速度
加速度にも『平均の加速度』と『瞬間の加速度』があるんですよ。
例えば、あなたが車に乗って、ドライブするとしましょう。
A地点を午前9時に通過したときは時速60 kmで、B地点を午前10時に通過したときは時速70 kmでした。
1時間の間に速度が60 km/h→70 km/hと10 km/h増えているので、加速度は10 km/h2と計算できますね。
単に「2点間の速度の変化量」と「かかった時間」から加速度を計算したわけです。
つまり、「A地点からB地点まで一定の加速度で走ったとしたら加速度は10 km/h2」という意味なんですね。
このように、「一定の加速度だとしたら」と仮定して計算した加速度を、『平均の加速度』と言いますよ。
でも、現実ではどうでしょうか?
はじめはゆっくり加速して、ある区間では一定の速度で走ったり、急ブレーキでストップしたり、赤信号になりそうだから減速したりして目的地に到着しますよね。
つまり、現実では加速度も時刻によってコロコロ変わるのです。
なので、実際に起こっている現象を正確にとらえるためには、「ある時刻での実際の加速度はどう変化したのか」を知ることが重要になるわけですね。
この「ある時刻での加速度」のことを『瞬間の加速度』と言いますよ。
それぞれの加速度の求め方について、まとめておきましょう。
平均の加速度
『平均の加速度』は、途中で加速したり減速したり、道が曲がっていても関係ないのです。
「2点間の速度の変化量」と「かかった時間」が分かれば計算できますよ。
出発時刻をt1、出発地点での速度をv1、到着時刻をt2、到着地点での速度をv2としますよ。
出発地点から到着地までの速度の変化量Δv=v2-v1、かかった時間Δt=t2-t1ですね。
そうすると、平均の加速度\(\bar{a}\)は、普通の加速度の公式と同じように計算できますよ。
加速度はaで表しますが、平均の加速度はaの上にバー(横棒)をつけて\(\bar{a}\)と表します。
\(\bar{a}\)=\(\frac{{v}_{2}-{v}_{1}}{{t}_{2}-{t}_{1}}\)=\(\frac{\it{\Delta} v}{\it{\Delta} t}\)
図5 平均の加速度
では、『瞬間の加速度』はどのように求めるのでしょうか?
瞬間の加速度
『瞬間の加速度』とは、「ある時刻での加速度」でしたね。
つまり、ほんの一瞬の加速度を求める、ということです。
図6 瞬間の加速度
平均の加速度\(\bar{a}\)=\(\frac{\it{\Delta} v}{\it{\Delta} t}\)ですが、この時間の間隔をとても短くとれば、瞬間の加速度になるんですね。
時間の間隔を1秒、0.1秒、0.01秒、0.001秒・・・と限りなく0に近づけるほど、正確な瞬間の速度になります。
時間間隔が短いほど、加速度が変化する余裕がないからですね。
物理学的に言えば、瞬間の加速度aは、
a=\(\frac{\it{\Delta} v}{\it{\Delta} t}\)
のΔtを限りなく0に近づけて、そのときのΔvを使えば求められますよ。
でも、Δtを限りなく0に近づけるって、具体的にどうやって瞬間の加速度を求めるのかさっぱり分かりませんよね。
しかーし!v–tグラフを使えば、平均の加速度も瞬間の加速度も計算できるんです!
v–tグラフから加速度がわかる
v–tグラフは、ある時刻tでの速度vを表したグラフで、vを縦軸にtを横軸にとりますね。
速度の時間変化が一目で分かる便利なグラフですよ。
まずは、平均の加速度をv–tグラフから求めてみましょう。
ある自動車がA地点からB地点まで移動したときのv–tグラフがこんな感じだったとしますね。
図7 自動車がA地点からB地点まで移動したときのv–tグラフ
A地点からB地点までの平均の加速度\(\bar{a}\)は、
\(\bar{a}\)=(A-B間の速度の変化量Δv)/(かかった時間Δt)=(8.0 m/s-2.0 m/s)/(4.0 s-1.0 s)=2.0 m/s2
となりますね。
(速度の変化量Δv)÷(時間Δt)はA-B間を結ぶ直線の傾きなので、A-B間の平均の加速度\(\bar{a}\)はA-B間を結ぶ直線の傾きとなるわけです。
図8 A-B間を結ぶ直線の傾き
次に、A地点での瞬間の加速度をv–tグラフから求めてみましょう。
瞬間を求めるためには、A-B間の時間間隔を短くすればいいですね。
ですから、グラフに沿ってB点をA点に近づけていきますよ。
図9 B点をA点に近づけた時の直線の傾きの変化
B点が動くと、A-B間を結ぶ直線も動くので、加速度を表す傾きがどんどん変わります。
B点がA点にほぼ重なると、A-B間を結ぶ直線はA点を通る接線になりましたよ。
つまり、A点での瞬間の加速度aはA点でのv–tグラフの接線の傾きというわけですね。
ここで、この接線が通る(t, v)が、(1.0 s, 2.0 m/s)と(3.0 s, 4.6 m/s)だとしましょう。
図10 A点を通る接線
そうすると、A点での瞬間の加速度aにあたる、A点での接線の傾きは、
a=(4.6 m/s-2.0 m/s)/(3.0 s-1.0 s)=1.3 m/s2
と計算できるわけですね。
v–tグラフについて、最後にひとつ。
等速直線運動のv–tグラフのところで説明したように、
v–tグラフと横軸で囲まれた面積=x0(t=0での位置)からの変位
になりますから、覚えておきましょうね。
さて、加速度について分かってきたでしょうか?
それでは、一緒に例題を解いて理解を深めましょう!
例題で理解!
このとき、次の問いに答えよ。
(1)t=1.0 sでの加速度a1は何m/s2か。
(2)t=3.0 sでの加速度a2は何m/s2か。
(3)t=0 sからt=6.0 sまでの移動距離Sは何mか。
図11 v–tグラフ
v–tグラフから加速度と移動距離を読み取る、という問題です。
さて、このv–tグラフはどの時間でも直線なので、「平均の加速度」も「瞬間の加速度」も同じですね。
ですから、グラフの傾きから、単に「加速度」を求めればいいんですよ。
(1)t=1.0 sでの加速度a1は何m/s2か。
t=1.0 sは、0 s≦t≦2.0 sに含まれていますね。
ですから、0 s≦t≦2.0 sでの加速度を求めればいいわけです。
v–tグラフは右上がりの直線で速度が増えているので、加速度は正の値になりますね。
t1=0 sでv1=0 m/s、t2=2.0 sでv2=6.0 m/sなので、加速度a1は、
a1=\(\frac{{v}_{2}-{v}_{1}}{{t}_{2}-{t}_{1}}\)=\(\frac{6.0 m/s-0 m/s}{2.0 s-0 s}\)=3.0 m/s2
(2)t=3.0 sでの加速度a2は何m/s2か。
t=3.0 sは、2.0 s≦t≦6.0 sに含まれていますね。
ですから、2.0 s≦t≦6.0 sでの加速度を求めればいいわけです。
v–tグラフは右下がりの直線で速度が減っているので、加速度は負の値になりますね。
t1=2.0 sでv1=6.0 m/s、t2=6.0 sでv2=0 m/sなので、加速度a2は、
a2=\(\frac{{v}_{2}-{v}_{1}}{{t}_{2}-{t}_{1}}\)=\(\rm\frac{0 m/s-6.0 m/s}{6.0 s-2.0 s}\)=-2.0 m/s2
(3)t=0 sからt=6.0 sまでの移動距離Sは何mか。
v–tグラフと横軸で囲まれた面積は、x0(t=0での位置)からの変位と等しいのでしたね。
そして、変位はそのまま移動距離になります。
図12 v–tグラフと横軸で囲まれた面積=移動距離
上の図で色のついた三角形の面積が移動距離Sになるので、
S=6.0×6.0÷2=18 m
加速度について理解できたでしょうか?
仕上げに、チェックテストにチャレンジです!
加速度の理解度チェックテスト
【問1】
下のグラフは、t=0 sで静止していた物体のv–tグラフである。
赤い破線は、t=0 sでのv–tグラフの接線を示す。
次の問いに答えよ。
(1)t=1.0 sからt=3.0 sまでの平均の加速度を求めよ。
(2)t=0 sでの瞬間の加速度を求めよ。
まとめ
今回は、加速度についてお話しました。
加速度とは、
- 単位時間あたりの速度の変化量で、単位は[m/s2]や[km/h2]などがある
負の加速度は、
- 正の向きに減速する場合と負の向きに加速する場合の2パターンがある
平均の加速度とは、
- \(\bar{a}\)=(速度の変化量Δv)÷(時間Δt)で求められる
- v–tグラフでは2点間を結ぶ直線の傾き
瞬間の加速度とは、
- a=(速度の変化量Δv)÷(時間Δt)のΔtを限りなく0に近づけると求められる
- v–tグラフではある時刻tでの接線の傾き
通常、物理で加速度と言えば、『瞬間の加速度』のことを指しますよ。
それから、負の加速度には2つのパターンがあることを覚えておいてくださいね。
これからよく出てきますよ。
次回は、等加速度直線運動についてお話しますね。
こちらへどうぞ。