
物理の問題では、測定値や計算結果を「有効数字(ゆうこうすうじ)〇〇桁で表せ」という文章がよく出てきますね。
『有効数字』って何なのでしょう?
物理学では、長さや質量のように色々な物理量が使われますが、みんな測定値や測定値から計算した値ですよね。
そして、測定値は測定器具の最小目盛りの1/10まで読みます。
ですから、最後(最小)の桁には必ず誤差が含まれているわけですね(誤差について詳しくはこちら)。
では、誤差が含まれている最後(最小)の桁の数字は意味がないのでしょうか?
最小目盛りが1 mmの30 cm定規を使って、ある物体の長さを測ってみましょう。
物体の端っこが10 mmと11 mmの真ん中あたりにかかったとしますね。
物体の長さはいくらでしょうか?
最小目盛りの1/10まで読んだ10.5 mmとする方が、10 mmや11 mmとするよりも実際の長さに近くなりますよね。
誤差が入っていても、最後(最小)の桁の「5」まで含めた方が、測定値としての信頼性は高いわけです。
このように、「誤差が入っていても、測定値としての信頼性が高い桁の数字」までを表示したものが、『有効数字』なんですね。
目次
有効数字の考え方
『有効数字』の「有効」とは、「誤差が入っていても、測定値としても信頼性が高い」という意味ですよ。
さっきの物体の長さの例で考えてみましょうか。
物体の端っこが10 mmと11 mmの真ん中あたりでしたね。
それで、30 cm定規の最小目盛りの1/10まで読んで、長さは10.5 mmとしたわけです。
この数字、10.52 mmでも10.56893 mmでも言うだけならできます。
でも、実際に30 ㎝定規で測ってみたらどうですか?
10.5 mmより下の桁は信頼性が高いと言えますか?
逆に、10 mmや11 mmはどうですか?
10 mm<物体の長さ<11 mmが表現できていませんが、10.5 mmより信頼性が高いと言えますか?
このように、『有効数字』という考え方がないと、測定値の取り扱いがバラバラになってしまいますよ。
測定値のどの桁までを『有効数字』とするかは大事な約束事なんですね。
一般的には、最小目盛りの1/10までを「有効」として読み取って、それよりも1つ下の桁の数字を四捨五入したと考えますよ。
ただし、読み取り値のうち、どこまでを「有効」とするかは測定器具によって変わるので、測定前に確認してくださいね。
さて、有効数字の桁数の決め方には何かルールがあるのでしょうか?
有効数字の桁数の決め方
桁数=意味のある数字の数
有効数字の基本はとても簡単なんですよ。
「数値として意味のある数字の数が、有効数字の桁数」になります。
例えば、21の有効数字は何桁でしょうか?
『2』『1』と数字が2つあるので、有効数字は2桁ですね。
210の有効数字は何桁でしょうか?
「『2』『1』『0』と数字が3つあるので、有効数字は3桁です!」
ピンポーン!正解!
では、2.1の有効数字は何桁でしょうか?
「『2』『1』と数字が2つあるので、有効数字は2桁です!」
ピンポーン!これも正解!
次は、2.01の有効数字は何桁でしょうか?
「『2』『0』『1』と数字が3つあるので、有効数字は3桁です!」
ピンポーン!またまた正解!良い調子ですね!
最後に、2.10の有効数字は何桁でしょうか?
「最後の0はなくても良いから、数字は『2』『1』の2つになって、有効数字は2桁です!」
うーん、残念!それはちょっと違うんですよ。
ここは間違えやすいので、説明していきますね。
最後(最小)の桁の0は有効数字
2.10の最後(最小)の桁の0は、数学の書き方では省略するかもしれませんね。
でも、科学ではちょっと違うのです。
2.10の最後の0は、「2.09でも2.11でもなく、2.10まで数値として信頼できる」ということを表しているのですね。
ですから、最後の0は、ちゃんと意味がある数字なんですよ。
「ということは、『2』『1』『0』と数字が3つあるので、有効数字は3桁です!」
ピンポーン!大正解ですね!
最後(最小)の桁の0は有効数字に含めます。
覚えておいてくださいね。
では、最初に0がつく小数の場合はどうなるのでしょうか?
位取りの0は有効数字に含めない
例えば、0.0210の有効数字は何桁でしょうか?
「数字が『0』『0』『2』『1』『0』と5つあるから、有効数字は5桁?」
うーん、残念ながら違うんですよ。
ここも間違えやすいので、しっかり覚えてくださいね。
小数の最初に並ぶ0は、位取り(くらいどり)の0と言って、有効数字には含めません。
小数の数値を左から見ていって、0以外の数値が出てきたら、そこから有効数字として数えるんですよ。
「そうすると、0以外の数字は『2』『1』『0』の3つだから、0.0210の有効数字は3桁です!」
正解!よくできました!
有効数字の桁数の決め方についてまとめると、こんな感じですね。
有効数字の桁数がはっきりと分かるように、指数を使った書き方もあるんですよ。
科学の世界では、よく使われる書き方なので、ここで理解しておきましょうね。
有効数字の科学的記法(明示的記法)
有効数字の桁数がはっきり分かる、科学的記法という書き方がありますよ。
指数を使った書き方で、ルールは3つです。
- 数は1の位から書く
- 有効数字と同じ桁数を持つ小数を書く
- 10の累乗(指数)を使って数の大きさを合わせる
ルールをまとめると、こんな感じですね。
例えば、12345を科学的記法で書くとどうなるでしょうか。
12345の有効数字の桁数は5桁ですね。
1の位から有効数字と同じ桁数を持つ小数を書くと、1.2345となりますよ。
数の大きさを合わせると、12345=1.2345×10000=1.2345×104となるわけです。
逆に、1.2345×104と書かれていたら、有効数字は5桁だとすぐ分かりますね。
小数の場合はどうでしょうか。
0.05を科学的記法で書いてみましょう。
有効数字は1桁ですから、数の大きさを合わせて書くと、5×0.01ですね。
ですから、5×0.01=5×10-2となりますよ。
0.0780の場合は、有効数字が3桁ですね。
そうすると、7.80×0.01=7.80×10-2と書けますよ。
逆に、7.80×10-2と書かれていたら、有効数字は3桁だとすぐ分かりますね。
科学的記法で書かれていない数値には、注意してくださいね。
例えば、「測定値が200 gだった」と言われても、どこまでが有効数字なのか分かりません。
200 gの有効数字が3桁(2.00×102 g)であれば、最後の0は誤差を含みますね。
有効数字より1つ下の桁、つまり、4桁目で数値が四捨五入されたことになります。
ですから、測定値の真の値の範囲は、199.5g(=1.995×102 g)<測定値<200.4 g(=2.004×102 g)となるわけですね。
200 gの有効数字が2桁(2.0×102 g)であれば、最後から2番目の0が誤差を含みますね。
有効数字より1つ下の桁、つまり、3桁目で数値が四捨五入されたことになります。
ですから、測定値の真の値の範囲は、195 g(=1.95×102 g)<測定値<204 g(=2.04×102 g)となるわけですね。
こんな感じで、有効数字の桁数によって、数値の真の値の範囲が大きく変わってしまいますよ。
有効数字が分かっている場合は、科学的記法を使うようにしましょうね。
はじめは慣れなくても、使っているうちにちゃんと慣れますよ。
では、理解度チェックテストにチャレンジです!
有効数字理解度チェックテスト
【問1】
次の数値を「△.△×10n」のように表せ。
(1)280 (2)2800000 (3)0.0028
【問2】
次の数値の有効数字は何桁か。
(1)5.21 (2)5.210 (3)0.0521 (4)5210
まとめ
今回は、有効数字の桁数の決め方についてお話しました。
有効数字の桁数は、
- 数値として意味のある数字の数のこと
- 数値の最後にある0を含める
- 小数の最初にある「位取りの0」は含めない
有効数字の科学的記法とは、
- 〇.〇・・・〇×10△と有効数字がはっきり分かるように指数を使った書き方のこと
『有効数字』って、はじめて聞いたときは「はあ?何これ?」とポカーンとしちゃいますね。
でもね、測定値をできる限り正確に表して伝えるために考え出された、大事な約束事なんです。
有効数字の桁数を指示している問題文もありますよね。
有効数字を間違うと、減点されることがあってもったいない!
いつも意識すれば、慣れて使いこなせるようになりますから大丈夫ですよ。
四則演算(足し算・引き算・掛け算・割り算)する場合に有効数字を決めるルールは、こちらで解説しています。