
物理の問題で良く出てくる『有効数字(ゆうこうすうじ)』とは、「誤差が入っていても、測定値としての信頼性が高い桁の数字」のことでしたね。
(有効数字について詳しくはこちら)
物理では、精度良く測定値を求めるだけではなく、測定値を使って色々な計算をすることがありますね。
例えば、m [kg]の物体を加速度a [m/s2]で動かすとき、必要な力Fはいくらでしょうか?と聞かれたら・・・、
運動方程式F=m×aにmとaの測定値を代入しますよね。
m=1.23 kg(有効数字3桁)とa=4.5 m/s2(有効数字2桁)だったら、掛け算した結果の有効数字はどう答えたら良いのでしょうね?
四則演算(足し算・引き算・掛け算・割り算)する場合の有効数字の決め方には、ちゃんとルールがあるんですよ。
では、その計算ルールを見ていきましょう。
目次
四則演算の有効数字
和と差の有効数字
測定値同士を足し算や引き算した結果にも、有効数字はあるはずですね。
その有効数字の桁数の決め方について、説明しますね。
足し算の答えは『和』、引き算の答えは『差』と言いますよ。
測定値同士の和や差の有効数字を決めるには、第何位まで有効な数字があるか?をチェックします。
「和や差は、測定値の最後(最小)の桁の位が一番高いものに合わせる」というルールがあるんですよ。
なので、こんな順番で計算するんですね。
- 各測定値が第何位まで有効か確認する
- 測定値の和や差を計算する
- 和や差が一番高い位まで有効になるように四捨五入する(計算の途中で四捨五入しない!)
これだけでは分かりにくいので、例で考えてみましょうか。
12.3と0.456という測定値の和を計算しますよ。
12.3は小数第1位まで有効
0.456は小数第3位まで有効
なので、和は小数第1位まで有効となりますね。
ですから、和である12.756は、小数第2位の5を四捨五入して、小数第1位までの12.8となるわけですね。
次は、12.3と0.456という測定値の差を計算しますよ。
計算ルールは、和を求めるときと同じですね。
測定値同士の和と差の有効数字を決めるルールは、分かりましたか?
「12.3も0.456も有効数字3桁ですよね。だから、和と差も有効数字3桁になったんですか?」
とっても良いところに気がつきましたね!
和と差の有効数字の桁数は、もとの数値の桁数と同じになるとは限りません。
実は、増減することがあるんですよ。
和と差の有効数字の桁数は増減することがある!?
例えば、9.3と2.7という測定値の和を計算してみますね。
9.3+2.7=12.0
9.3も2.7も小数第1位まで有効ですよね。
なので、和は小数第1位まで有効です。
最後の0は省略してはいけませんよ!
さて、9.3も2.7も有効数字2桁なのに、和の12.0は有効数字3桁ですよ。
ルール通りに和を計算すると、有効数字の桁数が増えちゃいました!
計算して桁が繰り上がると、有効数字の桁数が増えることがあるんですね。
よくあることなので心配ないですよ。
次は、5.02と5.01という測定値の差を計算してみましょうか。
5.02-5.01=0.01=1×10-2
5.02も5.01も小数第2位まで有効ですよ。
なので、差は小数第2位まで表記されていますね。
でも、5.02も5.01も有効数字3桁なのに、差の0.01=1×10-2は有効数字1桁ですよ。
ルール通りに計算すると、有効数字の桁数が減っちゃいました!
このように、有効数字の桁数が減ることを『桁落ち(けたおち)』と言います。
値がとても近い数字同士を引き算すると起きやすいですね。
数値の信頼性が減るのでもったいない気がしますが、ルール通りなので問題はないですよ。
ただし、3つ以上の測定値をまとめて計算する場合は注意してくださいね。
計算の途中で桁落ちすると、最終的な計算結果の有効数字が減ってしまいます。
そんなときは、値がとても近い数字同士の引き算を後回しにすると、桁落ちを避けられる場合がありますよ。
さて、測定値同士を掛け算や割り算した結果の有効数字を決めるルールは、どうなっているのでしょうか?
積と商の有効数字
数値同士を掛け算や割り算した結果にも、有効数字はあるはずですね。
その有効数字の桁数の決め方について、説明しますね。
掛け算の答えは『積』、割り算の答えは『商』と言いますよ。
数値同士の積や商の有効数字を決めるには、有効数字が何桁あるか?をチェックします。
「積や商は、数値の有効数字の桁数の一番小さいものに合わせる」というルールなんですね。
なので、こんな順番で計算していきますね。
- 各数値の有効数字の桁数を確認する
- 数値の積や商を計算する
- 積や商の有効数字の桁数が一番小さいものと合うように四捨五入する(計算の途中で四捨五入しない!)
例えば、12.34と7.65という測定値の積を計算しましょうか。
12.34の有効数字は4桁
7.65の有効数字は3桁
なので、積の有効数字は少ない方の3桁に合わせますよ。
ですから、積である94.4010は、4桁目の0を四捨五入して、有効数字3桁の94.4となるわけですね。
次は、1234と756という測定値の商を計算しますよ。
計算ルールは、積を求めるときと同じですね。
測定値同士の積と商の有効数字を決めるルールは分かりましたか?
ここまでは、測定値同士の計算でした。
ですが、物理の計算では、公式に測定値を代入して計算することがありますね。
定数×測定値、となるような計算のことですよ。
測定値同士ではなく、定数と測定値の計算をしたときは、有効数字をどうやって決めたら良いのでしょうか?
定数の有効数字は無限桁
ある円の半径を測定すると、2.3 cmでした。
この円の直径を計算しますよ。
半径r cmの直径dは、d=2×rです。
すると、d=2×2.3=4.6 cmになりますね。
「あれ?2.3は有効数字2桁ですけど、2は有効数字1桁だから、答えは有効数字1桁にならないんですか?」
そう、この場合は測定値の有効数字2桁に合わせて答えるんですよ。
実は、定数の「2」は、有効数字1桁ではないんですね。
半径の「2」倍という意味で、1.9倍でも2.1倍でもありません。
厳密に「2」倍と確定した値ですよ。
確定した値とは、2.0000・・・のように有効数字が無限桁になるということなんですね。
つまり、定数と測定値の計算は、有効数字が無限桁の数字(定数)と測定値との計算になります。
なので、計算結果の有効数字の桁数は、測定値のものに合わせるわけですね。
では、体重52 kgと56 kgの2人の平均体重を計算してみましょうか。
2人は1.9人でも2.1人でもありませんよね。
52も56も有効数字2桁ですから、答えも有効数字2桁になりますよ。
(52 kg+56 kg)÷2=54 kgですね。
和と差、積と商では、有効数字を決めるルールが違いましたよ。
混乱しないように、何度も復習して理解してくださいね
それでは、理解度チェックテストにチャレンジしましょう!
有効数字の四則演算理解度チェックテスト
【問1】
有効数字に注意して、以下の和、差を求めよ。
(1)7.8+2.073 (2)2.7+5.3 (3)8.455+62.345 (4)5.2-5.0 (5)3.5+7.2×102
【問2】
有効数字に注意して、以下の計算をせよ。
(1)縦10.5 cm、横7.0 cmの長方形の面積を求めよ。
(2)質量63.8 kgの荷物が3個ある場合の合計の質量
【問3】
次の半径を持つ円の面積をそれぞれ求めよ。
(1)半径5.0 cm (2)半径50 cm
まとめ
今回は、測定値を四則演算するときの有効数字のルールについてお話しました。
測定値同士の和と差の有効数字は、
- 和や差を計算してから、各測定値の最後(最小)の位が一番高い位に合わせて四捨五入する
測定値同士の積と商の有効数字は、
- 積や商を計算してから、各数値の有効数字の桁数が一番小さい桁数に合わせて四捨五入する
定数と測定値を計算した答えの有効数字は、
- 定数の有効数字は無限桁なので、答えの有効数字は測定値のものに合わせる
物理の問題では、「有効数字〇〇桁まで求めよ」という1文がないことがよくありますよ。
そんなときは、問題文に出てくる数値の有効数字をチェックして、今回お話した計算ルールを使って、正しい有効数字で解答してくださいね。