箔検電器の原理!静電誘導で帯電を調べる仕組みを図解!

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物質同士をこすり合わせると、静電気(せいでんき)が起きますね。
正負どちらの電気を帯びやすいか、は物質によって違うのでした。

 

もっと正確に言うと、温度や湿度、こすり合わせるものの形や表面状態によっても、ちょっと変わってきますよ。

 

では、この物質が帯電(たいでん)しているのか、帯電しているなら正負どちらなのか調べるには、どうしたら良いのでしょうか?

 

簡単に調べるための装置が、『箔検電器(はくけんでんき)』です。
中学理科でも、少し習いましたね。

 

物質を近づけると、2枚の箔が開閉するのです。
それを見れば、物質が帯電しているか、正負どちらに帯電しているか、簡単に分かってしまいますよ。

 

ただし、うまく使うには、『箔検電器』の原理をよく知っておく必要がありますね。

 

目次

箔検電器の原理と使い方

箔検電器の構造

『箔検電器』は、導体(どうたい)の静電誘導(せいでんゆうどう)を使って電気を検出する装置ですよ。

 

図1 箔検電器の構造

 

金属円板と2枚の金属箔が金属棒でつながっています。
円板も箔も導体なので、電子(でんし)は円板と箔の間を自由に動けるわけですね。

 

そして、箔が円板以外の外部と電荷をやり取りしないように、箔は不導体(ふどうたい)であるガラス瓶とゴム栓でできた空間に入れられていますよ。
箔検電器が帯電していないとき、箔は閉じています。

 

円板に物体を近づけると、2枚の箔が開閉します。
箔の開閉により、近づけた物体が帯電しているか、また、正負のどちらに帯電しているか調べることができる仕組みになっているわけですね。

 

さて、箔が開閉する条件は、一体何なのでしょうか?

 

箔が開閉する条件(箔検電器の帯電)

帯電していない箔検電器がここにありますよ。
はじめは箔が閉じていますね。

 

正の帯電体(たいでんたい)を円板にくっつけると、何が起こるでしょうか?

 

図2 正の帯電体を帯電していない箔検電器にくっつける

 

円板や箔の中の自由電子が、正の帯電体に移動しますね。
すると、箔検電器全体は電子が少なくなって正に帯電するのです。
2枚の箔は正に帯電して反発し合う斥力(せきりょく)が働くので、箔が開くわけですね。

 

え?円板や箔に陽イオンと電子のペアがいきなり現れたのはどうしてって?

 

導体中には、もともと陽イオンと電子がぎゅうぎゅうに詰まっていますよ。
それが同じ数だけあって、均等に分布していますね。
だから電気的に中性なので、何もないかのように描かなかったというお約束ですよ。

 

次に、負の帯電体を、帯電していない箔検電器の円板にくっつけてみますね。

 

図3 負の帯電体を帯電していない箔検電器にくっつける

 

負の帯電体の中の自由電子が、円板や箔に移動しますね。
ですから、箔検電器全体は負に帯電するのです。
2枚の箔は負に帯電して反発し合う斥力が働くので、箔が開くわけですね。

 

つまり、箔が開閉する条件は、

 

  • 箔が電気的に中性なら、箔は閉じている
  • 箔が正負どちらかに帯電していれば、斥力が働いて箔は開く

 

となりますね。

 

箔の開閉を理解するポイントは、電子がどう移動するかきちんと追うことですよ。

 

 

ところで、調べたい物体を箔検電器にくっつけると、物体と箔検電器の間で電子が移動しますね。
そうすると、物体の電気量が変わってしまいます。
帯電体だったものが電気的に中性になってしまうかもしれませんね。

 

物体の電気量を変えずに帯電しているか調べるには、どうしたら良いのでしょう?

 

物体が帯電しているか調べる

実は、帯電していない箔検電器に帯電体を近づけるだけで(くっつけませんよ!)、箔が帯電して開きます
箔が開くことが、近づけた物体が帯電しているサインになるのですね。

 

帯電体を近づけると、なぜ箔は帯電して開くのでしょうか?
箔検電器の円板と箔は導体ですね。
導体に帯電体を近づけると・・・、静電誘導が起こる(詳しくはこちら)ことがポイントですよ。

 

正の帯電体を近づけた場合

正の帯電体を、帯電していない箔検電器に近づけてみましょう。

 

静電誘導により、箔にある電子が円板に移動するので、円板は負に帯電しますね。
でも、原子核は移動できないので、箔には陽イオンが多く残っています。
ですから、箔は正に帯電して斥力により開くわけですね。

 

図4 正の帯電体を帯電していない箔検電器に近づけた場合

 

負の帯電体を近づけた場合

次に、負の帯電体を、帯電していない箔検電器に近づけてみましょう。

 

静電誘導により、円板にある電子は反発して箔に移動しますよ。
ですから、円板は正に帯電します。
箔には電子が多く集まるので、箔は負に帯電して斥力により開くわけですね。

 

図5 負の帯電体を帯電していない箔検電器に近づけた場合

 

つまり、帯電体を帯電していない箔検電器に近づけると、円板は近づけた帯電体と違う電荷に、箔は同じ電荷に帯電するわけですね。

 

さて、帯電体が正負どちらに帯電しているか調べたいときは、どうすれば良いのでしょうか?

 

帯電体の電気の種類を調べる

正負どちらに帯電したか分かっている箔検電器を用意しますよ。
円板も箔も同じ電荷に帯電しています。
帯電しているので、箔は最初から開いていますよ。

 

この箔検電器に、電気の種類が分からない帯電体を近づけてみましょう。

 

正に帯電した箔検電器の場合

円板も箔も正に帯電しているので、電子が少ない状態になっていますね。

 

①帯電体を近づけると、箔がさらに開いた場合

 

箔の中の電子が円板に移動して反発力が強くなったから、箔がさらに開いたのです。
負電荷である電子が円板に移動したということは、近づいた帯電体は正に帯電していたわけですね。

 

図6 正に帯電した箔検電器の箔がさらに開く場合

 

②帯電体を近づけると、箔が閉じた場合

 

円板中の電子が箔に移動したから、箔が閉じたのですね。
負の帯電体が近づいたから、電子が箔に移動したわけです。

 

図7 正に帯電した箔検電器の箔が閉じる場合

 

負に帯電した箔検電器の場合

円板も箔も負に帯電しているので、電子が多い状態になっていますよ。

 

①帯電体を近づけると、箔がさらに開いた場合

 

円板中の電子が箔に移動して反発力が強くなったから、箔がさらに開いたのですね。
負電荷である電子が箔に移動したということは、近づいた帯電体は負に帯電していたわけです。

 

図8 負に帯電した箔検電器の箔がさらに開く場合

 

②帯電体を近づけると、箔が閉じた場合

 

箔の中の電子が円板中に移動したから、箔が閉じたのですね。
ということは、正の帯電体が近づいたから、電子が引き寄せられたわけです。

 

図9 負に帯電した箔検電器の箔が閉じる場合

 

 

箔検電器で電気が検出できる原理は分かってきたでしょうか?

 

さて、箔検電器を電気的に中性にしたい場合もありますよね。
それはどうすれば良いのでしょうか?
帯電体を持ってきて近づけないといけないのでしょうか?

 

いいえ、他に簡単な方法がありますよ。
それは、『接地(せっち)』させることです。

 

箔検電器を接地させる

接地』は、帯電した物体などを地球の地面や人の身体に接続して、電気的に中性にすることです。
接地のことを、アースと言うこともありますよ。

 

地球や人の身体は、実は導体なのです。
ですから、他の物体と電子のやり取りをすることができますね。
一番簡単な接地の方法は、手で触ることなんですよ。

 

原子核は動かないので、接地しても移動するのは電子だけです。
ですから、帯電体が地球や人の身体に触れると、

 

  • 帯電体の電子が多い場合は、電子を地球や人の身体に放出する
  • 帯電体の電子が少ない場合は、電子を地球や人の身体から持ってくる

 

ということが起こりますよ。

 

さて、箔検電器が接地するとどうなるか考えてみましょうか。

 

正に帯電した箔検電器の接地

ここに、正に帯電して箔が開いた箔検電器がありますよ。
円板に指で触れるとどうなるでしょうか?

 

箔検電器の電子が少ないので、指から電子が流れ込みますね。
箔検電器は電気的に中性になって、箔が閉じるわけです。

 

図10 正に帯電した箔検電器に指で触れた場合

 

負に帯電した箔検電器の接地

次に、負に帯電して箔が開いた箔検電器がありますよ。
円板に指で触れるとどうなるでしょうか?

 

箔検電器の電子が多いので、電子が指へと放出されますね。
箔検電器は電気的に中性になって、箔が閉じるわけです。

 

図11 負に帯電した箔検電器に指で触れた場合

 

 

「指で触って接地すれば、箔検電器全体は中性になるんだ!かんたーん!」
確かにそうなのですが、ひとつだけ注意することがありますよ。

 

それは、箔検電器に帯電体を近づけたままで接地をするときなのです。

 

静電誘導による引力は強いので、静電誘導が起こっている円板は接地の影響を受けないのですね。

 

正の帯電体を近づけたまま接地

正の帯電体を帯電していない箔検電器に近づけてみましょう。
円板には静電誘導が起こって負に帯電し、箔は正に帯電して開きますね。

 

ここで正の帯電体を近づけたまま円板を指で触るとどうなるでしょう?

 

静電誘導が起こっている円板は、接地の影響を受けないので、負に帯電したままですね。
でも、正の帯電体から離れた箔には静電誘導が起こりません。
ですから、箔には指から電子が移動して中性になり、箔は閉じるわけですね。

 

図12 正の帯電体を円板に近づけたまま接地する場合

 

この状態では、箔だけが電気的に中性で、円板は負に帯電していますね。
ここで、指を離し、正の帯電体を遠ざけるとどうなるでしょうか?

 

電子量のバランスを取るために、円板の電子の一部が箔に移動するのです!
そして、箔は負に帯電して開くわけですね。
箔検電器全体も負に帯電してしまいますよ。

 

図13 図12の後に指を離し正の帯電体も遠ざけた場合

 

負の帯電体を近づけたまま接地

負の帯電体を帯電していない箔検電器に近づけてみましょう。
円板には静電誘導が起こって正に帯電し、箔は負に帯電して開きますね。

 

ここで負の帯電体を近づけたまま円板を指で触るとどうなるでしょう?

 

静電誘導が起こっている円板は、接地の影響を受けないので、正に帯電したままですね。
でも、負の帯電体から離れた箔には静電誘導が起こりません。
ですから、箔から指に電子が移動して中性になり、箔は閉じるわけですね。

 

図14 負の帯電体を円板に近づけたまま接地する場合

 

この状態では、箔だけが電気的に中性で、円板は正に帯電していますね。
ここで、指を離し、負の帯電体を遠ざけるとどうなるでしょうか?

 

電子量のバランスを取るために、箔の電子の一部が円板に移動するのです!
そして、箔は正に帯電して開くわけですね。
箔検電器全体も正に帯電してしまいますよ。

 

図15 図14の後に指を離し負の帯電体も遠ざけた場合

 

というわけで、帯電体を近づけたまま接地する場合は、箔が閉じても箔検電器全体が中性になったわけではありません
円板と箔の電荷がどうなっているか、ちゃんと考えてくださいね。

 

 

箔検電器の問題を解くポイントは、電子がどこに移動したか?をきちんと追うことです。
混乱しないように、図をきちんと描くと間違えませんよ。
各パターンを暗記すると、頭がパンクしちゃいます!

 

 

では、例題を解いて理解を深めましょう!

 

例題で理解!

例題
箔が閉じている箔検電器がある。
この箔検電器に(1)~(4)の操作をしたとき、箔は開くか閉じるか答えよ。
箔が開く場合は、正負のどちらに帯電しているかも答えよ。
(1)負の帯電体を円板に近づける。
(2)負の帯電体を近づけたまま、円板に指で触れる。
(3)その後に指を離し、さらに負の帯電体を遠ざける。
(4)さらにその後、再び円板に指で触れる。

 

(1)負の帯電体を円板に近づける。

 

箔が閉じているので、箔検電器ははじめは電気的に中性ですよ。
負の帯電体を円板に近づけると、円板中の自由電子は、負の帯電体と反発し合いますね。

 

ですから、電子は箔に移動して、円板には正に帯電します。
そうすると、箔は負に帯電して開くわけですね。

 

図16 負の帯電体を円板に近づける場合

 

(2)負の帯電体を近づけたまま、円板に指で触れる。

 

負の帯電体を近づけたまま円板を接地しても、円板は接地の影響を受けませんね。
でも、負の帯電体から離れた箔には静電誘導は起こりません。

 

ですから、接地すると箔にある電子が指に移動しますね。
箔は電気的に中性になって閉じるわけです。

 

図17 負の帯電体を近づけたまま円板に指で触れる場合

 

(3)その後に指を離し、さらに負の帯電体を遠ざける。

 

指を離してから、負の帯電体も遠ざけると、円板には何の電荷が残っているでしょうか?
そう、円板は正に帯電していたのでしたね。

 

正に帯電した円板と電気的に中性な箔の間で、電気量のバランスを取る必要がありますね。
ですから、箔から円板に電子が少しやってくるのです。
そうすると、箔は正に帯電して開くわけですね。

 

図18 指を離し、さらに負の帯電体を遠ざける場合

 

(4)さらにその後、再び円板に指で触れる。

 

箔検電器は全体的に正に帯電していますね。
ここで円板に指で触れると、指から電子が流れ込んできます。
ですから、箔検電器は電気的に中性になって、箔は閉じるわけですね。

 

図19 再び円板に指で触れる場合

 

 

それでは、理解度チェックテストにチャレンジしてみましょう!

 

箔検電器の原理理解度チェックテスト

【問1】
帯電して箔が開いた箔検電器がある。
この箔検電器の金属円板に、正の帯電体を近づけると、箔が閉じた。
(1)正の帯電体を近づけたとき、円板は正負のどちらに帯電しているか。
(2)箔検電器は、はじめは正負のどちらに帯電していたか。
(3)さらに正の帯電体を近づけると、箔は開いた。このとき、箔は正負のどちらに帯電しているか。
(4)次に、正の帯電体を近づけたまま円板に指で触れた。このとき、箔は開いたままか閉じるか。
(5)その後、指を離し、さらに正の帯電体を遠ざけた。正の帯電体を遠ざけたとき、箔は開くか閉じるか。開く場合は、箔は正負のどちらに帯電しているか。

解答・解説を見る
【解答】
(1)円板は負に帯電している。 
(2)箔検電器は負に帯電していた。 
(3)箔は正に帯電している。 
(4)箔は閉じる。 
(5)箔は負に帯電して開く。

【解説】
(1)正の帯電体を近づけると、静電誘導が起こって箔の電子は円板に集まる。
なので、円板は負に帯電している

 

(2)正の帯電体を近づけると、箔にあった電子は円板に移動した。
箔にあった電子が減り、箔は電気的に中性になって閉じた。
なので、はじめは箔に多くの電子があったことが分かる。
つまり、箔検電器ははじめは負に帯電していた

 

 

(3)正の帯電体をさらに近づけると、箔に残った電子が円板に引き寄せられる力がより強くなる。
さらに多くの電子が円板に移動するので、箔は正に帯電する

 

 

(4)円板に指で触れると、接地が起こる。
箔が電気的に中性になろうとして、指から箔へ電子が流れる。
なので、箔は閉じる

 

 

(5)静電誘導で働く引力は強いので、正の帯電体が近くにある円板は接地の影響を受けにくい。
なので、円板には電子が集まったままである。

 

指を離して接地の影響を無くした後、正の帯電体を遠ざけると、円板に集まっていた電子が箔に流れていく。
なので、箔は負に帯電して開く

 

 

まとめ

今回は、箔検電器の原理についてお話しました。

 

箔検電器は、

  • 導体の静電誘導を利用して、電気を検出する装置
  • 箔の開閉により、物体の帯電を調べることができる

 

箔検電器の問題を解くときは、

  • 電子の移動を図にして追うことがポイント

 

箔検電器の問題は混乱しやすいですよね。
電子の移動をきちんと追えば解けますよ。
電気的に中性=陽イオンと電子のペアが隠れていることも忘れないでくださいね。

 

次回は、電流についてお話しますね。
こちらへどうぞ。

 

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