電流とは?電子との関係や公式をわかりやすく解説!

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部屋のライト、冷蔵庫、電子レンジ、スマホ、パソコン・・・。

 

生活に欠かせない電気製品にはみんな電気が流れていますね。

 

その「電」気の「流」れを『電流(でんりゅう)』と言いますよ。
でも、電流は目に見えないので、何だかイメージしづらいですね。

 

コンセントに電源コードをさすと、照明が点いたり電気製品が動いたりします。
そこではじめて、「電流が流れてるなー」と思いますよね。

 

よく考えると謎が多い電流。

 

物理学的には、その目に見えない正体も大きさの求め方もちゃんと分かっているんですよ。

 

目次

電流

電流の正体

コンセントを差し込んだり、電池をつなぐと流れる電流。
この電流の正体は何なのでしょうか?


電流は「電」気の「流」れ、とさっきは言いましたね。
もう少し物理学的に正確に言いましょう。

 

イオンや電子などの帯電(たいでん)した粒子である荷電粒子(かでんりゅうし)の流れ」のことですよ。

 

荷電粒子とは、例えばこういうものです。

 

  • 金属のような導体(どうたい)中で移動できる自由電子(じゆうでんし)
  • 食塩水などの電解質水溶液(でんかいしつすいようえき)中にある陽イオンや陰イオン

 

小中学校の授業で、導線を使って電池に豆電球をつなげて光らせる実験をしましたね。

 

あのとき、導線を途中で切って食塩水やレモン汁などの電解質水溶液に差し込んでも豆電球は光りました。

 

図1 電池と豆電球をつなげて光らせる

 

つまり、電流は導体でできた導線中でも、電解質水溶液中でも流れるんですよ。

 

ただし、高校物理では導体のような固体中を流れる電流しか扱いません。
なので、『電流』と言えば、「導体でできた導線中を流れる自由電子の流れ」のこととしますね。

 

導体と自由電子について忘れていたら、こちらで復習しておいてくださいね。

 

さて、電流の正体は自由電子の流れであることは分かりました。
流れですから、流れの向きがあるはずですよね。

 

電流の流れる向きは、どうなっているのでしょうか?

 

電流の流れる向きと自由電子の流れる向き

豆電球を電池につなげると、導線に電流が流れるから光りますよね。
このとき、電流はどの向きに流れていますか?

 

電池の+(正極・せいきょく)から-(負極・ふきょく)に向かって流れる、と答えるでしょう。

 

それは、そう習ったからですよね。
でも、誰も電流の流れを見たことなんてありませんよ。

 

では、どうして電流は正極から負極へ流れることになっているのでしょうか?

 

はい、フランスの物理学者アンドレ=マリ・アンペールさんがそう決めたからなんです。

 

昔の科学者たちは、「何だかよく分からない何か」が導線を流れることは知っていました。
しかし、何が流れているのか分からなかったのですね。

 

ただ、確かに何かが流れているから、正極から負極へ流れているとしよう、となったわけです。

 

ところが、20世紀になってから、電流の正体=自由電子の流れということが分かりました。

 

ここでクイズです!
電子は負の電気を帯びていますが、電池をつなぐと電子は正極と負極のどちらに移動するでしょうか?

 

負電荷(ふでんか)同士は反発しますし、正電荷(せいでんか)と負電荷は引き合いますよね。
なので、電子は負極から正極に向かって流れることになります。

 

つまり、「電流の流れる向き」と「自由電子の動く向き」は逆なんです!

 

図2 電流の流れる向きと自由電子の流れる向き

 

ただし、「今さら電流の向きを逆転させるのは大変だよね・・・」ということで、そのままになってしまいました。

 

まとめると、こういうことなんですね。

 

  • 電流は正極から負極へ流れると決めた
  • 実際に導線中を流れる自由電子は負極から正極へ移動する

 

電流の向きと自由電子の流れる向きは間違えやすいので注意ですよ!

 

さて、「電流 = 自由電子の流れ」ですが、その大きさはどうやって決めているのでしょうか?

 

電流の大きさ

導線を流れる電流の大きさは、どのように決めるのでしょうか。

 

ここで、電流を水の流れとしてイメージしてみましょう。
そうすると、「電流が大きい=水流が激しい」ことになりますね。

 

水流が激しくなる条件は何でしょうか?

 

  • 水が速く流れる
  • 水量が多く流れる

 

ということですよね。

 

電流に置きかえると、電流が大きいということは、

 

  • 自由電子が速く流れる
  • 自由電子が数多く流れる

 

ことになりますね。

 

自由電子が速く流れると1秒間に通過できる電子数が増えます。
そして、通過する電子数が増える=通過する電気量が増えることになりますね。

 

このことを物理学的に言うと、こういうことですよ。

 

電流の大きさ=導線の断面を1秒間に通過する電気量

 

電流の単位は[A](アンペア)で、アンペールにちなんだものですよ。

 

単位を変換すると、[A]=[C]/[s]=[C/s]となります。
[C]は電気量の単位クーロン、[s]は秒”second”を表す単位ですね。

 

そして、電流の大きさを表す記号はI(電流の強さ”intensity of electric current”に由来)を使います。

 

1.0秒間に1.0 Cの電気量が流れたら1.0 C/s=1.0 Aの電流が流れますね。
1.0秒間に4.0 Cの電気量が流れたら4.0 C/s=4.0 Aの電流が流れますよ。

 

つまり、t秒間にq [C]の電気量が流れるときの電流の大きさI [A]はこうなるわけです。

 

I\(\frac{q}{t}\)

 

図3 t秒間にq [C]の電気量が流れるときの電流の大きさI [A]

 

例えば、5.0秒間に15 Cの電気量が導線を通ったとしますよ。
電流の大きさは1秒間に流れた電気量なので、\(\frac{15 \rm{C}}{5.0 \rm{s}}\)=3.0 Aですね。

 

逆に、電流の大きさI=一定のとき、t秒間に導線を流れた電気量q [C]はこう表されます。

 

qIt

 

3.0 Aの電流が流れているとき、5.0秒間に導線を流れた電気量は3.0 A×5.0 s=15 Cですよ。

 

さて、ひとつ補足がありますよ!

 

ここでは、一定の電流が流れるとしたのでI\(\frac{q}{t}\)としました。

 

でも、流れる電流が時間や導線の場所によって変わる場合があるんですね。
そういうときは、微小時間Δt(Δ(デルタ)は変化量を表すギリシャ文字)で考えましょう!

 

Δt秒間に流れた電気量がΔq [C]なら、流れた電流はこうなりますよ。

 

I\(\frac{\Delta q}{\Delta t}\)

 

電流と電気量の関係をきちんと理解してくださいね。

 

次は、電子の動きを追うミクロな視点から電流の流れる様子を考えてみましょう。

 

導体中の電流と電子の動き

多くの電子が導線中を流れている様子をイメージしてくださいね。

 

その導線の断面の面積=断面積がS [m2](平方メートル)で、導線1 m3(立方メートル)あたりn個の電子があるとしますよ。

 

「え?単位はm(メートル)が基準なの?導線は細いのに大きすぎない?」
ちょっと違和感があるかもしれませんね。

 

物理で長さや面積や体積を表すときは、基本的にmが基準なんですよ。
計算間違いのもとになるので、注意してくださいね。

 

さて、この導線に電池をつなぐと電流が流れます。
そうすると、電流の向きと反対向きに電子が移動しますね。

 

電子の電気量は-e [C]=-1.6×10-19 Cです。
ここで、電子が移動する(平均の)速さをv [m/s](メートル毎秒)としますよ。

 

図4 導線中に含まれる電子

 

電流の大きさは1秒間に通過する電気量でしたね。
では、1秒間に導線の断面を流れる電子数を計算してみましょう。

 

ただし、電子数をひとつひとつ数えるのは大変ですよね。
そこで、電子の速さv [m/s](速度”velocity”に由来)を使いますよ。

 

電子は1秒間にv [m]進みますね。
導線の断面積はS [m2]なので、1秒間に断面を通る電子が含まれる立体の体積は、
底面積S [m2]×高さv [m]=vS [m3]となるわけです。

 

そして、導線1 m3あたりにn個の電子がありましたね(n [個/m3])。
そうすると、1秒間に導線の断面を流れる電子数はn×vSnvS [個]です。

 

図5 1秒間に導線の断面を移動する電子数

 

電子の電気量は-e [C]なので、1秒間に移動するnvS [個]の電子の電気量は-envS [C]となりますね。

 

つまり、電流の大きさ=導線の断面を1秒間に通過する電気量は、

 

I=|-e|nvSenvS

 

求めるのは電流の大きさですから、電気量の絶対値|-e|=eを使うことに注意してくださいね。

 

この式の導き方は、試験にもよく出てきますよ。
導き出す流れをよく理解しておきましょう。

 

では、例題を解いてみましょう!

 

例題で理解!

例題
以下の問いに答えよ。

(1)10分間に300 Cの電荷が導線内を移動したとき、電流の値は何Aか。
(2)2.0 mAの電流が120秒間流れたとき、通過した電気量は何Cか。
(3)断面積4.0 mm2の導線に4.0 Aの電流を流した。
電気素量を1.6×10-19 C、導線1 mm3内に含まれる電子の数を5.0×1019 個とすると、導線を流れる電子の平均の速さは何m/sか。

 

(1)10分間に300 Cの電荷が導線内を移動したとき、電流の値は何Aか。

 

10分=10×60=600秒の間に300 Cの電荷が移動したわけですね。

 

I\(\frac{q}{t}\)より、
I\(\frac{300}{600}\)0.50 A

 

問題文に出てくる数値で一番小さい有効数字は2桁ですね。
なので、有効数字2桁で答えますよ。

 

(2)2.0 mAの電流が120秒間流れたとき、通過した電気量は何Cか。

 

I [A]がt秒間流れたときに通過する電気量はqItですね。

 

2.0 mA=2.0×10-3 Aですから、通過した電気量は、
qIt=2.0 mA=2.0×10-3 ×120=0.24 C

 

(3)断面積4.0 mm2の導線に4.0 Aの電流を流した。
電気素量を1.6×10-19 C、導線1.0 mm3内に含まれる電子の数を5.0×1019 個とすると、導線を流れる電子の平均の速さは何m/sか。

 

I=envSの関係から、求めたい電子の速さはv\(\frac{I}{enS}\)ですね。

 

この式に代入していきますが、単位に気をつけましょう!

 

断面積Sの単位は[m2]なので、4.0 mm2=4.0×10-6 m2ですね。
単位体積あたりの電子数の単位は[個/m3]なので、5.0×1019 個/mm3=5.0×1028 個/m3となりますよ。

 

v\(\frac{I}{enS}\)\(\frac{4.0}{1.6×10^{-19}×5.0×10^{28}×4.0×10^{-6}}\)=0.125×10-31.3×10-4 m/s

 

電流と電気量や電子との関係について、理解できましたか?

 

仕上げに、理解度チェックテストにチャレンジです!

 

電流理解度チェックテスト

【問1】
断面積10 mm2の銀線に2.0 Aの電流が流れている。
このとき、自由電子の移動する平均の速さv [m/s]を求めよ。
ただし、銀線中の自由電子の密度は5.8×1028個/m3、電子1個の電荷は-1.6×10-19 Cとする。

解答・解説を見る
【解答】
2.2×10-5 m/s

【解説】
I=envSの関係から、v\(\frac{I}{enS}\)として求める。

断面積Sの単位はm2なので、10 mm2=10×10-6 m2と単位変換して代入する。
問題文に出てくる数値は有効数字2桁なので、有効数字2桁で答えることに注意する。

v\(\frac{I}{enS}\)\(\frac{2.0}{1.6×10^{-19}×5.8×10^{28}×10×10^{-6}}\)2.2×10-5 m/s

 

まとめ

今回は、電流についてお話しました。

 

電流は、

  • 電荷の流れ(導体中を流れる電流は自由電子の流れ)で、大きさを表す記号はI、単位は[A]=[C/s]
  • 流れる向きは自由電子の移動する向きと逆になる
  • I\(\frac{q}{t}\)(t秒間にq [C]の電気量が流れる)
  • IenvS(断面積S [m2]の導体中を単位体積あたりn [個/m3]の自由電子が速度v [m/s]で通過する)

 

電流の向きと自由電子の流れる向きが逆であること、IenvSを導く流れはよく出題されますよ。
ここでマスターしておきましょうね!

 

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