
『速度』とは、「単位時間あたりの変位を表したもので、速度=変位÷かかった時間」でしたね。
そして、『速さ』とは、速度の大きさです。
(速さと速度について、詳しくはこちら)
今なら、こういう問題は、すぐに解けちゃいますよね。
「Aさんは家を8時に出て1000 m離れた学校まで歩き、8時10分に学校に着きました。家から学校に向かう向きを正として、Aさんの歩く速度を求めなさい」
Aさんの歩く速度=1000 m÷10 分=100 m/分(メートル毎分)となるわけです。
計算は合っていますが・・・、これって現実的なんですかね?
実際に、家から学校までずーっと分速100 mのままで歩けますか?
さっき、家からコンビニまで買い物に行ったんですが、
信号でストップしたり、街路樹の花を眺めながらのんびり歩いたり、短い坂を急いで歩いたりしましたよ。
歩く速度は途中で色々と変化するのが自然なんですよね。
こんな風に、途中で変わる速度って、考えなくて良いんでしょうか?
何だか現実的じゃないですよね。
実は、昔の科学者たちも同じことを考えたのですね。
そして、2種類の『速度(速さ)』が決められました。
それが、『平均の速度(速さ)』と『瞬間の速度(速さ)』なんですよ。
目次
平均の速度と瞬間の速度
さっきはAさんが歩く速度について考えましたが、自転車や自動車、電車に乗ったときも同じですね。
はじめはゆっくり走り出し、ある場所ではストップしたりある区間では最高速度になったりと、動いたり止まったりを繰り返して、目的地に到着します。
例として、Aさんの話に戻りますよ。
さっきの計算では、途中での速度の変化を考えていませんでしたね。
単に「目的地までの変位」と「かかった時間」から速度を計算しました。
つまり、Aさんが「出発地から目的地まで一定の速度で歩いたとしたら分速100 m」というわけですね。
このように、「一定の速度だとしたら」と仮定して計算した速度を、『平均の速度』と言います。
これが、物理での「平均」という考え方ですよ。
ですが、分速100 mと言っても、実際に1分ごとに100 mずつ動いてはいませんね。
物理では、実際に起こっている現象を読み解いていきます。
なので、「一定の速度だとしたら」という仮定よりも、「実際の速度はどう変化したのか」が大事になるわけですね。
ですから、「8時1分での速度」「8時5分での速度」のように、「ある時刻での速度」が重要になってきます。
この「ある時刻での速度」を『瞬間の速度』と言いますよ。
それぞれの速度の求め方について、まとめておきますね。
平均の速度
『平均の速度』は、途中で動いたり止まったり、道が直線ではなくクネクネ曲がっていても関係ありませんよ。
「出発地点から目的地点までの変位」と「かかった時間」が分かれば計算できます。
出発地点の位置をx1、出発時刻をt1、目的地点の位置をx2、目的地への到着時刻をt2としましょう。
出発地から目的地までの距離(変位)Δx=x2-x1、かかった時間Δt=t2-t1ですね。
(Δ(デルタ)は差分や変化量を表すギリシャ文字)
そうすると、平均の速度\(\bar{v}\)=\(\frac{変位}{時間}\)と、普通の速度の公式と同じように計算できますよ。
速度はv(速度を表す”velocity”の頭文字)と表しますが、平均の速度はvの上にバー(横棒)をつけて\(\bar{v}\)と表します。
\(\bar{v}\)=\(\frac{{x}_{2}-{x}_{1}}{{t}_{2}-{t}_{1}}\)=\(\frac{\it{\Delta} x}{\it{\Delta} t}\)
図1 平均の速度
では、『瞬間の速度』はどのように求めるのでしょう?
瞬間の速度
先ほど、『瞬間の速度』は「ある時刻での速度」と言いましたね。
つまり、ほんの一瞬の速度を求める、ということなんですよ。
図2 瞬間の速度
平均の速度\(\bar{v}\)=\(\frac{変位}{時間}\)でしたが、この時間の間隔を短くとれば、瞬間の速度になるんです。
例えば、「8時1分0秒」と「8時1分1秒」の間の変位を使って、8時1分の瞬間の速度を計算するイメージですね。
この時間の間隔を1秒、0.1秒、0.01秒、0.001秒・・・と限りなく0に近づけるほど、正確な瞬間の速度になりますよ。
時間間隔が短いほど、速度が変化する余裕がないですからね。
物理学的に言うと、瞬間の速度vは、
v=\(\frac{\it{\Delta} x}{\it{\Delta} t}\)
のΔtをものすごーく小さくして、そのときのΔxを使うと求められますよ。
「Δtをものすごーく小さくって、どうやって瞬間の速度を求めるのか分からないんですけど?」
実は、平均の速度も瞬間の速度も、x–tグラフから計算できるんです!
x–tグラフから速度がわかる
「x–tグラフって何ですか?何だか難しそう・・・」
いえいえ、難しくありませんよ。
物体の運動を考えるときに、とっても便利なグラフです。
x–tグラフは、ある時刻tでの位置xを表したグラフで、xを縦軸にtを横軸にとりますよ。
物理で〇-△グラフと言われたら、〇は縦軸で△は横軸なので、覚えておいてくださいね。
図3 x–tグラフ(縦軸がx、横軸がtのグラフ)
例えば、ある自動車がA地点からB地点まで移動したときのx–tグラフがこんな感じだったとしますよ。
図4 自動車がA地点からB地点まで移動したときのx–tグラフ
A地点からB地点までの平均の速度\(\bar{v}\)は、
\(\bar{v}\)=(AからBまでの変位Δx)÷(かかった時間Δt)=(8.0 m-2.0m)÷(4.0 s-1.0 s)=2.0 m/s(メートル毎秒)
となりますね。
(変位Δx)÷(時間Δt)はAーB間を結ぶ直線の傾きですから、A-B間の平均の速度\(\bar{v}\)はA-B間を結ぶ直線の傾きというわけです。
図5 A-B間を結ぶ直線の傾き
次に、A地点での瞬間の速度をx–tグラフを使って求めてみましょう。
瞬間を求めるためには、A-B間の時間の間隔を短くすればいいですね。
なので、グラフに沿ってB点をA点に近づけていきますよ。
図6 B点をA点に近づけた時の直線の傾きの変化
B点が動くと、A-B間を結ぶ直線も動いて、速度を表す傾きがどんどん変わります。
B点がA点にほぼ重なると、AーB間を結ぶ直線はA点を通る接線になりましたね。
つまり、A点での瞬間の速度vはA点でのx–tグラフの接線の傾きというわけです。
この接線が通る(t, x)が、(1.0 s, 2.0 m)と(3.0 s, 4.6 m)だったとしますよ。
図7 A点を通る接線
すると、A点での瞬間の速度vにあたる、A点での接線の傾きは、
v=(4.6 m-2.0 m)÷(3.0 s-1.0 s)=1.3 m/s
と計算できるわけですね。
『平均の速度』と『瞬間の速度』の違いや、それぞれの求め方は分かりましたか?
理解を深めるために、チェックテストにチャレンジしましょう!
平均の速度と瞬間の速度理解度チェックテスト
【問1】
ⅹ軸上を正の向きに移動する物体aとbのx–tグラフを下に示した。
また、グラフ上の赤線は、物体bにおけるA点での接線である。
次の問いに答えよ。
(1)物体aについて、20秒から30秒までの平均の速度を求めよ。
(2)物体bについて、A点(20秒)での瞬間の速度を求めよ。
(3)瞬間の速度が0になることがあるのは、物体aとbのどちらか。それは何秒のときか。
まとめ
今回は、平均の速度と瞬間の速度についてお話しました。
平均の速度とは、
- \(\bar{v}\)=(2地点間の変位Δx)÷(かかった時間Δt)で求められる
- x–tグラフでは2点間を結ぶ直線の傾き
瞬間の速度とは、
- v=(変位Δx)÷(時間Δt)のΔtを限りなく0に近づけると求められる
- x–tグラフではある時刻tでの接線の傾き
通常、物理で速度と言うと、『瞬間の速度』を意味しますよ。
瞬間の速度を求めたり、物体の運動を理解するためには、x–tグラフはとても便利です。
「グラフって難しそうで嫌だなあ」と思うかもしれませんね。
でも、慣れれば色々な情報がすぐに読み取れるようになりますよ。
次回は、等速直線運動についてお話しますね。
こちらへどうぞ。