偶然誤差と系統誤差の違い!絶対誤差と相対誤差の求め方!

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物理学では、長さや質量のように色々な物理量が出てきますね。
それらは、測定をしてその値が決まるわけです。

 

その『測定値』は、測定された物体そのものの『真の値』なんでしょうか?

 

例えば、30 cm定規を使って、ある紙の幅を測ってみますね。
定規には1 mmごとの目盛りがついていますよ。

 

測定器具の目盛りは、最小目盛りの1/10まで読むのが原則ですよね。
なので、目分量で0.1 mmまで読みましょう!

 

さて、測定結果は10.03 cmでした。
この値は、どれくらい正確だと思いますか?

 

他の人は10.02 ㎝、いや、10.04 cmと読むかもしれませんね。
最後(最小)の桁は、どうしてもばらついてしまいます。

 

というわけで、紙の幅の測定値=真の値とはならないのですね。
測定値には、ある程度の不確かさが含まれます。
この不確かさのことを、『誤差(ごさ)』と言いますよ。

 

「えー、測定しても真の値が分からないなら、意味ないじゃん」
諦めるのは、まだ早ーーーい!

 

もし、測定値に含まれる誤差の原因と誤差の大きさが分かったら?
原因の対策をすれば誤差は減らせますね。
誤差の大きさが分かるなら、測定値から誤差を引けば真の値に近い値が求められますよ。

 

昔の科学者たちもそう思ったんですね。
なので、誤差の原因を調べて分類したり、誤差の大きさの求め方を考え出したわけです。

 

目次

偶然誤差と系統誤差

さっきの紙の幅を測定した例に戻りましょう。
測定値がばらつく原因は、何だと思いますか?

 

例えば・・・、

 

紙の端っこはゆがんだりしていますから、どこが本当の端っこなのかはっきりしませんね。
それに、最小目盛りの1/10まで目分量で読むので、角度によって見え方が変わりそうです。

 

また、気温によって、定規は多少伸び縮みする可能性がありますね。
暑い夏は目盛りが伸びて測定値が短めに、寒い冬は目盛りが縮んで測定値が長めになるかも?

 

測定値がばらつく原因は、色々とありそうですね。
さて、上に挙げた原因が大きく2つに分けられることに気づきましたか?

 

ひとつは、紙の端っこのゆがみや目分量での読み取りの不確かさです。
この誤差は、測定者がコントロールできない偶然によって生じたものなんですね。
なので、『偶然誤差(ぐうぜんごさ)』と呼びますよ。

 

もうひとつは、測定器である定規が原因の不確かさですね。
気温によって大きく伸縮する定規で測定した値は、夏は短めで冬は長めの傾向になるわけです。
このように、偶然ではなく、一定の傾向を持つ誤差を『系統誤差(けいとうごさ)』と呼びますよ。

 

2つの誤差の特徴をまとめておきますね。

 

偶然誤差

その名の通り、測定者にはコントロールできないような、偶然に起きたことで生じるのが偶然誤差です。
偶然誤差の原因は色々あるので、これだ!と決めるのが難しいですよね。

 

そこで、偶然誤差の原因を突き止めるよりも、その影響を減らす方法を考えよう!ということになりました。
さて、どうやって測定値への偶然誤差の影響を減らしましょうか?

 

その答えは、「何度も測定する」なんですよ。

 

「統計学」の力を借りることで、「測定回数を増やせば増やすほど、測定値がある値の近くに集まる」ことが分かりました。
このある値が、平均値なんです。

 

そこで、測定の平均値を、真の値に近いもっともらしい値=最確値(さいかくち)として使うことにしたわけですね。

 

測定の回数を増やすほど、最確値の信頼性は高くなりますよ。
測定を何度も行うのは、どうしても起きてしまう偶然誤差の影響を減らして、最確値の信頼性を上げるためだったんですね。

 

図1 測定回数が少ない場合と多い場合の測定値

 

系統誤差

偶然ではなく、測定値が一定の傾向に偏る誤差が系統誤差ですね。

 

例えば、気温によって伸び縮みする定規のような測定機器の不備や、測定者のクセで目盛りを少な目に読み取るなどの偏りが原因です。
人間も測定機器の一種と考えれば、測定機器が持つ誤差とも言えますね。

 

測定機器の不備も色々あるので、原因を突き止めるのは難しいですよ。

 

そこで、系統誤差の影響をはじめから減らす作業をするようになりました。
測定前に機器の不備を点検したり、基準点を合わせる校正(こうせい・キャリブレーション)を行うのは、系統誤差の影響を減らすためだったんですね。

 

図2 測定機器の校正前後の測定値

 

では、次の例で偶然誤差と系統誤差の違いについて考えてみましょうか。

 

振り子の周期をストップウォッチで測る実験をしていますね。

 

図3 振り子の周期を測定する実験

 

AくんとBくんは、同じ振り子の周期を10回ずつ測りました。
振り子を観察する場所は同じですが、別々のストップウォッチを使っていますよ。

 

図4 AくんとBくんの測定結果

 

どちらの測定値も、平均値(最確値)の周りにばらついていますね。
ストップウォッチを押すタイミングや、振り子を観察する角度は、完全に一定にはできませんよね。
こういう偶然による偶然誤差があったのでしょうね。

 

それと、ひとつ気になる点がありますね。
Aくんの測定値よりも、Bくんの測定値は大きい傾向があるみたいですよ。

 

観察した場所も観察した振り子も同じなのにおかしいですよね。
そこで、2人はそれぞれのストップウォッチを調べました。

 

すると、Bくんのストップウォッチは故障していて、0.0秒ではなく0.5秒から測り始めていたのです。
0.0秒から測るように校正すると、Bくんの測定値も2.4秒の周りにばらつくようになりましたよ。

 

これで、振り子の周期の最確値は2.4秒だと分かりましたね。
Bくんの測定値がAくんの測定値より大きい傾向にあったのは、ストップウォッチの故障による系統誤差だったわけです。

 

図5 偶然誤差と系統誤差

 

測定の精密さと正確さと精度

偶然誤差による測定値のばらつきが小さいことを、「精密さが高い」と言いますよ。
精密さとは、ばらつきの範囲の大きさのことです。
測定値のばらつきの範囲が小さいほど、精密さが高いわけですね。

 

系統誤差が小さいことを、「正確さが高い」と言いますよ。
正確さとは、真の値(最確値)にどれくらい近いか?を表すのです。
測定値が真の値(最確値)に近いほど、正確さが高いわけですね。

 

「精度」は偶然誤差にも系統誤差にも使われますね。
誤差が小さいほど、「精度が高い」ということですよ。

 

精密さと正確さについて、ダーツや矢の的に例えて説明しますね。
何度も測定することは、的に向かって何度も矢を放つことに置きかえましょう。

 

的の中心を最確値としますよ。
そうすると、矢が的に当たった範囲が精密さ、矢と的の中心との距離が正確さになるわけです。

 

矢が当たった範囲が狭いほど、精密さが高くなりますね。
また、矢が当たった場所が的の中心に近いほど、正確さが高くなりますよ。

 

こう考えると、精密さと正確さは図6のような4パターンに分けられますね。

 

図6 精密さと正確さの4パターン

 

つまり、精密さは高くても正確さも高いとは限らないし、正確さが高くても精密さも高いとは限らないわけですね。
もちろん、精密さも正確さも高い測定がベストですよ。

 

このことを踏まえて、もう一度AくんとBくんの測定結果を見てみましょう。

 

図7 AくんとBくんの測定結果

 

偶然誤差である測定値のばらつきは、AくんよりBくんの方が小さいですね。
でも、測定値が振り子の周期の最確値である2.4秒に近いのはAくんですよ。

 

つまり、Aくんの測定値は、精密さは低いが正確さは高いわけです。
Bくんの測定値は、精密さは高いが正確さは低いのですね。

 

 

それから、誤差にはもうひとつ、『過失誤差(かしつごさ)』がありますよ。
その名の通り、機器の操作ミスや実験者の勘違い、目盛りの読み間違い、記録の間違い、実験条件の事前確認を忘れた、などのうっかりミスです。

 

こればっかりは、どんなに賢い科学者でも完璧な対策はできませんでした。
というわけで、気をつけましょう!!

 

ここまでは、誤差の原因の種類を見てきました。
さて、誤差はどのように求めるのでしょうか?

 

誤差の求め方

誤差の求め方は2種類ありますよ。
それは、『絶対誤差(ぜったいごさ)』と『相対誤差(そうたいごさ)』なんです。

 

絶対誤差

絶対誤差は、測定値と真の値(最確値)との差のことなんですね。
このように表しますよ。

 

絶対誤差=測定値-真の値(最確値)

 

最確値が10 gである物体の質量を測定したら、11 gだったとしましょう。
この測定の絶対誤差は、11 g-10 g=1 gとなるわけですね。

 

測定値<真の値(最確値)の場合は、絶対誤差が負の値になりますよ。
ただし、誤差の大きさのみを聞かれた場合は、絶対値をつけた値で答えることがあります。

 

最確値が10 gである物体の質量を測定したら、9 gだったときの絶対誤差の大きさは、
絶対誤差=|9 g-10 g|=1 gですね。
||は絶対値を表す記号でしたね。

 

相対誤差

相対誤差は、真の値(最確値)に対して絶対誤差はどれくらいの割合なのか、を表しますよ。

 

相対誤差=\(\frac{絶対誤差}{真の値(最確値)}\)×100〔%〕

 

最確値が10gである物体の質量を測定したら、11 gだったときの相対誤差は、
\(\frac{1 \,\rm{g}}{10 \,\rm{g}}\)×100=10 %となるわけですね。

 

相対誤差も大きさのみを聞かれた場合は、絶対値で答えることがありますよ。

 

ところで、誤差は測定値と真の値がどれくらいずれているか、を表すものですよね。
ではどうして、絶対誤差だけではなく相対誤差も必要なのでしょう?

 

相対誤差はなぜ必要?使い分けは?

こんな例を考えてみましょうか。

 

①長さ10 ㎝の物体を11 ㎝と測定した
②長さ100 ㎝の物体を101 ㎝と測定した

 

さて、どちらの測定精度が高いでしょう?
絶対誤差はどちらも1 cmだから、同じ測定精度・・・なんでしょうか?

 

絶対誤差は同じなのに、①より②の誤差の方が小さく感じませんか?
長さが100 ㎝もあれば、1 ㎝くらいずれることもあるよねーと思っちゃいますよね。

 

つまり、最確値のスケールが違う場合に絶対誤差だけで比べると、
「結局、その誤差は問題になるほど大きいの?」という精度が分かりにくいわけです。

 

では、相対誤差で比べてみましょうか。
①相対誤差=\(\frac{1 \,\rm{cm}}{10 \,\rm{cm}}\)×100=10 %
②相対誤差=\(\frac{1 \,\rm{cm}}{100 \,\rm{cm}}\)×100=1 %

 

相対誤差を使うと、②の測定精度が高いことが数値で表現できていますね。
相対誤差には、スケールの違うものの誤差の程度が比べられるというメリットがあるのです。

 

では、こんな場合はどうでしょうか。
①長さ1000 mの道路を測定したときの絶対誤差が1 m
②長さ10 ㎝の紐を測定したときの絶対誤差が0.1 mm

 

どちらの測定精度が高いでしょうか?
絶対誤差を比べても、スケールが違いすぎて分かりませんね。

 

相対誤差で比べると、
\(\frac{1 \,\rm{m}}{1000 \,\rm{m}}\)×100=0.1 %
\(\frac{0.1 \,\rm{mm}}{10 \,\rm{cm}}\)×100=0.1 %

 

何と、どちらの相対誤差も0.1 %でした。
測定精度はどちらも同じだったわけですね。

 

誤差の理論は、専門書が1冊書けるくらい複雑なものなんです。
高校レベルの物理では、今回お話した内容が理解できれば十分だと思いますよ。

 

それでは、理解度チェックテストで確認しましょう!

 

誤差理解度チェックテスト

【問1】
次の文章中の( )を埋めよ。

より精密な器具で測定すれば、精度の高い測定が可能である。
それでも、測定値の(ア)の桁の値には(イ)が存在する。
このように、避けられない(イ)を(ウ)と言う。
(イ)は(イ)=測定値-(エ)と表される。
(エ)は単なるエラーではなく、測定の回数を増やしたり、測定時の状況を考えることにより、その大きさの程度が「(オ)」として見積もられる。

解答を見る
【解答】
(ア)最後(最小) (イ)誤差 (ウ)偶然誤差 (エ)真の値 (オ)不確かさの度合い

【問2】
それぞれの絶対誤差と相対誤差を求めよ。

(1)観測量が500 mで誤差が0.1 m
(2)観測量が100 gで誤差が5 g

解答・解説を見る
【解答】
(1)絶対誤差は0.1 m、相対誤差は0.02 % 
(2)絶対誤差は5 g、相対誤差は5 %

【解説】
(1)絶対誤差は誤差そのものの大きさなので、絶対誤差は0.1 m
相対誤差は、(0.1/500)×100=0.02 %

(2)絶対誤差は誤差そのものの大きさなので、絶対誤差は5 g
相対誤差は、(5/100)×100=5 %

 

まとめ

今回は、誤差の原因と誤差の求め方についてお話しました。

 

誤差は、

  • 大きく分けて偶然誤差と系統誤差がある
  • 偶然誤差は測定者がコントロールできない偶然によるもので、測定回数を増やすことで影響が減らせる
  • 系統誤差は機器不備などにより測定値が一定の傾向に偏るもので、測定機器の校正により影響が減らせる

 

誤差の表し方は、

  • 絶対誤差と相対誤差がある
  • 絶対誤差=測定値-真の値(最確値)
  • 相対誤差=\(\frac{絶対誤差}{真の値(最確値)}\)×100 %

 

どんな測定値にも必ず色々な誤差が含まれている、ということを忘れないでくださいね。

 

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