熱量保存の法則とは?問題の解き方のコツも解説!

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寒くなってくると、温かいお風呂が恋しくなりますね。
さあ、寝る前にぬくぬくあったまろう~と湯舟に足を入れたとたん、

 

「あっ、熱ーーーーい!!」

 

あわてて蛇口をひねって、水をジャバジャバ・・・、
ようやく火傷しなくてすむ温度まで下がりました。

 

そうだお茶が飲みたいな、と冷たい湯のみに熱いお茶を注ぎます。
冷たい湯のみがじんわり温まってきましたね。

 

よくある話ですが、どうしてこんな事が起こるのか考えたことはありますか?

 

「熱いお湯と冷たい水を混ぜたらぬるま湯になるの当たり前だよね」
「冷たいものに熱いものをくっつけたら、まあ温まるよね」

 

そうです。そして、その当たり前を解明するのが科学です。
熱いお湯と冷たい水が分かれたままでいないし、熱いお茶が入った湯のみが冷たいままでいないのはなぜなのでしょう?

 

科学者たちはどう考えたのか、聞いてみましょうか。

 

目次

熱の移動と熱平衡状態

熱いお湯に冷たい水を入れてしばらくすると、ある温度のぬるま湯になりますね。
冷たい水に熱いお湯を入れても、しばらくするとある温度のぬるま湯になります。

 

冷たいカップに熱いお茶を注ぐとカップがじんわり温まり、しばらくするとお茶とカップの温度が同じになります。

 

一体何が起こったのでしょう?

 

科学者たちは、物理学的にこう説明することにしました。

 

「高温の物体と低温の物体をくっつけたり混ぜたりすると、高温の物体から低温の物体へ熱が移動するんだ」
熱は必ず高温側から低温側へ移動する。低温側から高温側へ移動することはないね」
「高温の物体と低温の物体が接してしばらくすると、両者は同じ温度になるね。同じ温度になったとき熱の移動はなくなるんだ。熱の移動がない状態を『熱平衡(ねつへいこう)状』と呼ぼう!」

 

つまり、熱いお湯と冷たい水が混ざると、お湯から水へ熱が移動して、しばらくすると熱平衡状態のぬるま湯になるというわけですね。

 

ところで、物体の間で移動した熱の量(=熱量)って、どれくらいか分からないのでしょうか?

 

熱量の保存

熱量保存の法則

物体間を移動した熱量について、科学者たちは大事なことを発見しました。

 

高温の物体Aと低温の物体Bの間だけで熱の移動があるとき(外部との間で熱の出入りがないとき)、高温の物体Aが失った熱量QA=低温Bの物体が得た熱量QBになる

 

これを『熱量保存の法則』と言います。

 

図1 熱の移動と熱平衡

 

簡単に言うと、
「熱いお湯に冷たい水を混ぜたとき、お湯が失った熱量はそのまま全て水が受け取る」
ということですよ。

 

ただし、この法則には成り立つ条件がついています。
高温の物体と低温の物体の間だけで熱の移動があるとき(外部との間で熱の出入りがないとき)
とはどういうことでしょう?

 

例えば、保温ジャーに入れた熱いスープは、長時間熱いままですよね。
保温ジャーは「断熱材(だんねつざい)」という熱を伝えにくい素材で作られているので、熱いスープの熱量がなかなか失われないからです。
身近にある断熱材は、発泡スチロールです。

 

では、カップに入れた熱いコーヒーはどうですか?
コーヒーとカップは熱平衡に達した後、どんどん冷めてしまいますよね。
熱いコーヒーが失った熱量をカップが受け取って熱平衡に達したのに、その後冷めるのはなぜでしょう?

 

それは、コーヒーとカップの間だけでなく、外部との間で熱の出入りがあるからです。
この場合の「外部」とは、周りの空気です。

 

熱いコーヒーが失った熱量は、カップと周りの空気が受け取っています。
ですから、コーヒーとカップと空気が熱平衡に達するまで、熱が移動し続けてしまうのです。

 

熱量保存の法則』を使うときは、

 

  • 何と何の間で熱が移動するのか
  • 外部との間で熱の出入りがないか

 

に注意しましょうね。

 

移動した熱量の求め方

さて、実際に移動した熱量を求めるには、熱量の計算式を使います。
熱容量』や『比熱』を使えば、熱量が計算できるのでしたね。

 

熱量の計算式は、問題文で与えられた条件によって使い分けます。

 

  • 熱容量Cが関係する:QCΔT
  • 比熱cか質量mが関係する:QmcΔT

 

Q(熱量”quantity of heat”に由来) は熱量、C(熱容量”heat capacity”に由来) は熱容量、c(比熱容量”specific heat capacity”に由来) は比熱、m(質量”mass”に由来)は質量ですね。
そして、ΔT(Tは温度”temperature”に由来、Δ(デルタ)は変化量を表すギリシャ文字)は温度変化分であることに注意ですよ。

 

次は、熱量保存の法則を使って問題を解くコツをつかみましょう!

 

熱量保存の法則を使った問題の解き方

2つの物体間での熱の移動

例題1
発泡スチロール容器に20 ℃の水100 gが入っている。ここに80 ℃のお湯50 gを入れてかき混ぜた。熱平衡に達したとき、全体の温度は何℃になるか。
ただし、水の比熱を4.2 J/(g・K)とし、外部との熱の出入りはないものとする。

 

「うわあ・・・何が何だか分からない」と思っても大丈夫!
問題文の状況を整理すれば、ちゃんと理解できます。

 

<状況整理のやり方>

①問題文の内容を図にします。
 視覚化すると分かりやすくなります。

 

②次の3ポイントを見つけます。

 

  1. 登場人物は誰か
  2. 誰から誰に熱が移動したか
  3. 求めたいことは何か

 

このやり方で例題1を整理してみましょう。

 

①図を描いてみる。

②状況整理の3ポイントを見つける。

1. 登場人物は誰か

登場人物は、「発泡スチロール容器」と「20 ℃の水」と「80 ℃のお湯」ですね。

 

2.誰から誰に熱が移動したか

問題文の最後に「外部との熱の出入りはないものとする」と書いてあるので、登場人物の間だけで熱が移動することが分かります。

 

そして、「発泡スチロール容器」は断熱材なので、容器に熱が移動しません。
ですので、「お湯から水に熱が移動」します。

 

3.求めたいことは何か

水にお湯を混ぜて熱平衡に達した後の全体の温度」です。

 

では、実際に解きましょう。

 

「お湯から水に熱が移動」するのですから、熱量保存の法則から、
(お湯が失った熱量Q1)=(水が得た熱量Q2)
となります。

 

問題文にお湯と水の質量と比熱が書かれているので、熱量の計算式はQmcΔTを使います。

 

熱平衡に達した温度をt℃とすると、
お湯が失った熱量Q1は、
Q1mcΔT=50×4.2×(80―t)
水が得た熱量Q2は、
Q2mcΔT=100×4.2×(t―20)
Q1Q2なので、
50×4.2×(80―t)=100×4.2×(t―20)
t=40

答えは、40℃です。

 

次は、3つの物体間で熱の移動がある問題にチャレンジです!

 

3つの物体間での熱の移動

例題2
ある容器に50 gの水を入れると、全体の温度が20 ℃になった。ここに80 ℃のお湯60 gを入れると全体の温度が50 ℃になった。
さらにこの中に100 ℃に熱した200 gの金属球を入れると、全体の温度は60 ℃になった。
ただし、水の比熱を4.2 J/(g・K)とし、外部との熱の出入りはないものとする。

(1)容器の熱容量は何J/Kか。
(2)金属球の比熱は何J/(g・K)か。

 

前の問題と同じやり方で解いていきましょう。

 

①図を描いてみる。

 

②状況整理の3ポイントを見つける。

1.登場人物は誰か

登場人物は、「20 ℃の容器」「20 ℃の水」「80 ℃のお湯」「100 ℃の金属球」ですね。
・・・実は、変身した隠れキャラが2人います!
最初にお湯と水と容器が熱平衡に達してできた「50 ℃の容器」と「50 ℃のお湯」です。

 

2.誰から誰に熱が移動したか

問題文の最後に「外部との熱の出入りはないものとする」と書いてあるので、登場人物の間だけで熱が移動することが分かります。

 

最初に「容器」と「水」が20 ℃の熱平衡に達しました。
そこに「80 ℃のお湯」を入れると50 ℃の熱平衡に達しました。

 

つまり、「80 ℃のお湯から20 ℃の容器と20 ℃の水に熱が移動」したので、
(80 ℃のお湯が失った熱量Q1)=(20 ℃の容器が得た熱量Q2)+(20 ℃の水が得た熱量Q3)

 

次に、80 ℃のお湯と20 ℃の水を混ぜてできた「50 ℃のお湯」に「100 ℃の金属球」を入れると熱平衡に達しました。

 

100 ℃の金属球から50 ℃の容器と50 ℃のお湯に熱が移動」したので、
(100 ℃の金属球が失った熱量Q4)=(50 ℃の容器が得た熱量Q5)+(50 ℃のお湯が得た熱量Q6)

 

3.求めたいことは何か

容器の熱容量」と「金属球の比熱」です。

 

では、解いていきましょう。

 

(1)まず、容器の熱容量C [J/K]を求めます。
お湯と水は質量と比熱が分かっているのでQmcΔT、容器はQCΔTを使います。

 

80 ℃のお湯が失った熱量Q1は、
Q1mcΔT=60×4.2×(80―50)
20 ℃の容器が得た熱量Q2は、
Q2mcΔTC×(50―20)
20 ℃の水が得た熱量Q3は、
Q3mcΔT=50×4.2×(50―20)

 

Q1Q2Q3より、
60×4.2×(80―50)=C×(50―20)+50×4.2×(50―20)
C=60×4.2―50×4.2=42

容器の熱容量は42 J/Kです。

 

(2)次は、金属球の比熱c [J/(g・K)]を求めます。
50 ℃のお湯と100 ℃の金属球の質量が分かっているのでQmcΔT、容器はQCΔTを使います

 

100 ℃の金属球が失った熱量Q4は、
Q4mcΔT=200×c×(100―60)
50 ℃の容器が得た熱量Q5は、
Q5mcΔT=42×(60―50)
50 ℃のお湯が得た熱量Q6は、
Q6mcΔT=110×4.2×(60―50)

 

Q4Q5Q6より、
200×c×(100―60)=42×(60―50)+110×4.2×(60―50)
c=0.63

金属球の比熱は0.63 J/(g・K)です。

 

慣れてくると、図を描くだけで解けるようになりますよ。

 

熱量保存の法則理解度チェックテスト

【問1】
100 gの金属製の容器に水50 gを入れると全体の温度が20 ℃になった。ここに50 ℃のお湯25 gを入れたところ、全体の温度が29 ℃になった。
ただし、水の比熱を4.2 J/(g・K)とし、外部との熱の出入りはないものとする。
次の問いに答えよ。

(1)お湯が失った熱量は何Jか。
(2)金属製の容器の熱容量は何J/Kか。
(3)容器に使われた金属の比熱は何J/(g・K)か。
(4)全体の温度を29 ℃から35 ℃にするには、50 ℃のお湯をさらに何g加えればよいか。有効数字2桁で答えよ。

解答・解説を見る
【解答】
(1)2205 J (2)35 J/K (3)0.35 J/(g・K) (4)33 g

【解説】
(1)25 gのお湯の温度が50 ℃から29 ℃まで下がったので、お湯が失った熱量Q1は、
Q1mcΔT
 =25×4.2×(50―29)
 =2205 J

 

(2)熱量保存の法則から、(お湯が失った熱量Q1)=(水が得た熱量Q2)+(容器が得た熱量Q3)となる。
水50gの温度が20 ℃から29 ℃まで上がったので、水が得た熱量Q2は、
Q2mcΔT
 =50×4.2×(29―20)
 =1890
容器の熱容量をCとすると、容器が得た熱量Q3は、
Q3CΔT
 =C×(29―20)
 =9C
Q1=Q2+Q3から、
2205=1890+9C
C35 J/K

 

(3)容器の熱容量が35 J/Kで質量が100gなので、比熱cは、
cC/m
 =35/100
 =0.35 J/(g・K)

 

(4)ここで75 gの水と熱容量35 J/Kの容器の温度が29 ℃になっている。ここに50 ℃のお湯をx〔g〕加えると考える。
熱量保存の法則から、(お湯が失った熱量Q4)=(水が得た熱量Q5)+(容器が得た熱量Q6)となる。

 

お湯の温度が50 ℃から35 ℃まで下がるので、お湯が失った熱量Q4は、
Q4mcΔT
 =x×4.2×(50―35)
 =63x
水75 gの温度が29 ℃から35 ℃まで上がるので、水が得た熱量Q5は、
Q5mcΔT
 =75×4.2×(35―29)
 =1890
熱容量35 J/Kの容器の温度が29 ℃から35 ℃まで上がるので、容器が得た熱量Q6は、
Q6CΔT
 =35×(35―29)
 =210
Q4=Q5+Q6から、
63x=1890+210
 x=33.3=33 g

 

まとめ

今回は、温度が違う物体間の熱の移動と熱量保存の法則についてお話しました。

 

高温の物体と低温の物体が接したとき、

  • 高温の物体から低温の物体へ熱が移動する(逆方向はない)
  • 接した物体が同じ温度になり熱の移動がなくなる状態が熱平衡状態

 

熱量保存の法則とは、

  • 接した物体の間だけで熱の移動があるとき(外部との間で熱の出入りがないとき)、
    (高温の物体が失った熱量)=(低温の物体が得た熱量)

 

どの物体の間で熱のやり取りがあるのか?をチェックすれば、どんな問題もこわくありませんよ!

 

次回は、物質の状態変化についてお話しますね。
こちらへどうぞ。

 

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