
今回は、『作用反作用の法則(さようはんさようのほうそく)』を取り上げますね。
中学校の理科でも習うので、聞いたことはあるでしょう。
空気を押しても手応えは感じませんね。
窓につるしたカーテンを押すと少し手応えを感じます。
部屋の壁を押すともっと強い手応えがありますね。
あなたが手応えを感じるのは、押したものから押し返されるからです。
押すだけでなく、例えば重い物にロープをつけて引っ張るときも抵抗するような力を感じますよね。
このように、押すと押し返され、引っ張ると引っ張られることを『作用反作用の法則』と言いますよ。
この法則は、2-1と2-2で学んだ『力のつり合い』とごっちゃになりやすいのです。
この違いも理解していきましょうね。
目次
作用反作用の法則
作用反作用の法則とは
押すと押し返され、引っ張ると引っ張られることが『作用反作用の法則』でしたね。
もっと物理学らしく言うとこうなりますよ。
- 物体Aが物体Bに力を加える(作用)とき、物体Aは反対向きで同じ大きさで同一作用線上にある力を物体Bから受ける(反作用)。
ちょっと具体的な例で説明しましょう。
例えば、あなたが壁を押しているとしますよ。
すると、あなたが壁を押すと同時に、壁もあなたを押しているんです。
この2つの力は同時に必ず現れるんですよ。
この場合は、どちらも垂直抗力(すいちょくこうりょく)ですね。
図1 作用反作用の関係
あなたが壁を押す力を「作用」とすれば、壁があなたを押す力が「反作用」になります。
どちらが作用でもかまいませんよ。
一方が「作用」なら、もう一方が「反作用」になるわけですね。
そして、作用の大きさと反作用の大きさは同じです。
あなたが壁を50 N(ニュートン)の力で押せば、壁があなたを50 Nの力で押しますね。
あなたが壁につけたロープを50 Nの力で引っ張れば、壁はあなたを50 Nの力で引っ張るわけです。
ところで、日常生活では、「わあ、これは作用反作用の法則だ!」って実感しづらいですよね。
ローラースケートやスケボーに乗って壁を押したときぐらいでしょうか。
自分は押し返されて後ろ向きに下がりますが、壁はびくともしないのでちょっと実感しづらいですね。
図2 スケボーに乗って壁を押す
地球上では多くのものが固定されて動かないので、力を一方的にかけていると感じてしまうんですよ。
でもね、宇宙空間に浮いているもの同士なら、作用反作用の法則を体感できるんですよ。
(なかなか行けませんけどね・・・)
宇宙ステーションの映像でこんなの見たことありませんか?
プカプカ浮いた物体をプカプカ浮いた宇宙飛行士が押します。
そうすると、物体と宇宙飛行士はお互い反対方向に飛んでいきますね。
さて、作用反作用の関係になっている2力は、「反対向き」で「同じ大きさ」で「同一作用線上」にありますね。
この3条件は、力のつり合いの条件とそっくりです。
力のつり合いと作用反作用の法則は、どこが違うのでしょう?
力のつり合いと作用反作用の法則
力のつり合いと作用反作用の法則の違いは、ズバリこれです!
- 力のつり合いは1つの物体に働く力の関係
- 作用反作用は2つの物体の間でお互いに働く力の関係
1つの物体に働いていないと、反対向きで同じ大きさでも力がつり合うことはありませんよ。
なので、力のつり合いの式を立てるとき、はじめに着目物体を1つ決めるんですね。
図3 つり合いの2力とつり合いではない2力
図4 作用反作用の関係にある2力
もっと具体的な例で、力のつり合いの関係と作用反作用の関係を考えてみましょう。
質量m(質量”mass”の頭文字)のおもりが、天井から糸でつるされて静止していますよ。
糸は軽くて伸び縮みしないものとし、天井の質量は無視しますね。
重力加速度をg(重力”gravity”の頭文字)として、おもりと糸と天井に働く力を全て書き出してみてください。
図5 天井から糸でつるされた質量mのおもり
物体に働く力は、3ステップで書けましたね。
- 着目する物体を決める
- 重力を表す矢印を物体の重心から書く
- 物体にくっついたものから受ける全ての接触力の矢印と大きさを書く
着目物体をおもり→糸→天井と変えて働く力を書き出すと、こうなりますよ。
図6 おもり、糸、天井に働く力
まず、おもりに着目しますよ。
おもりに働く力は、鉛直下向きの重力mgと糸がおもりを引く張力T(張力”tension”の頭文字)ですね。
鉛直上向きを正とすると、力のつり合いの式T+(-mg)=0からT=mgです。
次に、着目する物体を糸(質量は無視)に変えますね。
糸はおもりと天井にくっついていますよ。
なので、糸に働く力はおもりが糸を引く力Xと天井が糸を引く力Yです。
鉛直上向きを正とすると、力のつり合いの式(-X)+Y=0からX=Yですよ。
それから、「糸がおもりを引く力T」と「おもりが糸を引く力X」は作用反作用の関係なので、T=Xですね。
最後に、天井(質量は無視)に着目しましょう。
天井は糸と接しているので、天井に働く力は糸が天井を引く力Zですね。
さらに、「糸が天井を引く力Z」と「天井が糸を引く力Y」は作用反作用の関係なので、Y=Zとなりますよ。
つまり、T=X=Y=Z=mgだったわけです。
おもり、糸、天井に働く力をまとめるとこうなりますよ。
図7 おもり、糸、天井に働く力のつり合いの関係と作用反作用の関係
着目する物体を変えるときは作用反作用の法則を忘れないでくださいね。
物体に働く力を書き忘れなくなりますよ。
「作用として力が加わると必ず反作用がありますよね。図7の重力mgの反作用は無いんですか?」
目のつけどころが素晴らしいですね!
重力に反作用は無いのでしょうか?
ありますよ!
重力の反作用は物体が地球を引く力
ここまでに登場した作用反作用の関係は、「人が壁を押す力」と「壁が人を押す力」や、「おもりが糸を引く力」と「糸がおもりを引く力」などでしたね。
つまり、物体が他の物体と直に接触する点から受ける『接触力』の場合を考えていたわけです。
さて、重力は地球がつくり上げた重力場という空間から受ける力で、『場の力』のひとつでしたね。
もちろん、場の力である重力にも反作用はあります!
重力は「地球が物体を引く力」なので、その反作用は「物体が地球を引く力」ですよ。
作用反作用の関係から、反作用の大きさは重力と同じなんですね。
あなたの体重が50 kgなら、あなたは50 kg×9.8 m/s2(メートル毎秒毎秒)=490 Nの力で地球を引っ張っているのです!
地表面に立つ人に働く力と地球に働く力は、図8のようになりますよ。
図8 地表面の人に働く力と地球に働く力
人に着目すると、人に働く力は「地球が人を引く重力W(重量”weight”の頭文字)」と「地球が人を押す垂直抗力N(垂直抗力”normal force”の頭文字)」ですね。
この2力はつり合っていますよ。
次に地球に着目すると、作用反作用の関係から地球に働く力は、
「地球が人を引く重力W」の反作用である「地球が人を引く力F(力”force”の頭文字)」
「地球が人を押す垂直抗力N」の反作用である「人が地球を押す垂直抗力N′」
の2力になりますね。
この2力もつり合っていますよ。
というわけで、物体が受ける重力の反作用、つまり、「地球が物体から受ける重力」はちゃんとあるんです。
ただし、問題で問われない限り無視してもかまいませんよ。
重力の反作用まで考えると、計算が複雑になるだけだからです。
ただし、その存在は忘れないでくださいね。
「場の力」の作用反作用の例として、他には『磁力(じりょく)』がありますよ。
例えば、磁石のN極とS極を近づけると、くっつく前から引き合いますよね。
このとき、N極はS極を引っ張り、反対にS極もN極を引っ張りますね。
これも作用反作用なんです。
磁力は重力と同じように「場の力」なので、接していなくても作用反作用の法則が成り立つのですね。
では、例題を解いて理解を深めましょう!
例題で理解!
物体は静止している。
ここで、次の4つの力を考える。
地球が物体を引く力\(\vec{F_{1}}\)
地面が物体を押す力\(\vec{F_{2}}\)
物体が地面を押す力\(\vec{F_{3}}\)
物体が地球を引く力\(\vec{F_{4}}\)
(1)\(\vec{F_{1}}\)、\(\vec{F_{2}}\)、\(\vec{F_{3}}\)、\(\vec{F_{4}}\)を図示せよ。
(2)作用反作用の関係にある力を全てあげよ。
(3)物体に働く力のつり合いを示す式を立てよ。
図9 地表面に置かれた物体
(1)\(\vec{F_{1}}\)、\(\vec{F_{2}}\)、\(\vec{F_{3}}\)、\(\vec{F_{4}}\)を図示せよ。
\(\vec{F_{1}}\):地球が物体を引く力→物体に働く重力
\(\vec{F_{2}}\):地面が物体を押す力→物体に働く垂直抗力
\(\vec{F_{3}}\):物体が地面を押す力→地面に働く垂直抗力
\(\vec{F_{4}}\):物体が地球を引く力→地球に働く重力
図示するとこうなりますよ。
図10 \(\vec{F_{1}}\)、\(\vec{F_{2}}\)、\(\vec{F_{3}}\)、\(\vec{F_{4}}\)の図示
(2)作用反作用の関係にある力を全てあげよ。
地球が物体を引く(作用\(\vec{F_{1}}\))ので、地球は物体から引かれる(反作用\(\vec{F_{4}}\))のですね。
そして、物体が地面を押す(作用\(\vec{F_{3}}\))ので、物体は地面から押し返される(反作用\(\vec{F_{2}}\))わけです。
なので、作用反作用の関係にある力は、\(\underline{\vec{F_{1}}と\vec{F_{4}}}\)、\(\underline{\vec{F_{2}}と\vec{F_{3}}}\)ですよ。
(3)物体に働く力のつり合いを示す式を立てよ。
物体に働く力は、地球が物体を引く力\(\vec{F_{1}}\)と地面が物体を押す力\(\vec{F_{2}}\)ですね。
この2力がつり合って合力=0なので、物体は地面上で静止しているわけです。
ですから、物体に働く力のつり合いの式は、\(\underline{\vec{F_{1}}+\vec{F_{2}}=0}\)となりますね。
重力加速度をgとして、以下の問いに答えよ。
(1)物体Aが物体Bから受ける力と物体Bが床Cから受ける力をそれぞれ求めよ。
図11 物体Aと物体Bと床C
(2)次に、物体Aの上から力Fを加えた。
このとき、物体Aが物体Bから受ける力と物体Bが床Cから受ける力をそれぞれ求めよ。
図12 物体Aと物体Bと床Cと物体Aに加えた力F
物体Aと物体Bが受ける重力をそれぞれWAとWB、物体Aと物体Bと床Cが受ける垂直抗力をそれぞれNAとNBとNCして、
問いに答える前に、物体Aと物体Bと床Cに働く全ての力を書き出してみましょう。
まずは、物体に働く重力を鉛直下向きに書きますよ。
物体Aに働く重力の大きさはm1g、物体Bに働く重力の大きさはm2gとなります。
図13 物体Aと物体Bに働く重力
次に、それぞれの物体に注目して接する面から受ける力を書き出してみましょう。
物体Aは、物体Bと接していますね。
なので、物体Bと接する面から垂直抗力NAを受けますよ。
物体Bは、物体Aと床Cと接していますね。
なので、物体Aと接する面から垂直抗力NBを、床Cと接する面から垂直抗力NB′を受けますよ。
そして、床Cは物体Bと接する面から垂直抗力NCを受けますね。
図14 物体Aと物体Bと床Cに働く全ての力
さて、2つの物体が接しているとき、作用があれば必ず反作用があります。
ですから、物体Aが物体Bから受ける垂直抗力NAを作用とすれば、物体Bが物体Aから受ける垂直抗力NBは反作用ですね。
つまり、NA=NBになります。
そして、物体Bが床Cから受ける垂直抗力NB′を作用とすれば、床Cが物体Bから受ける垂直抗力NCは反作用ですね。
つまり、NB′=NCというわけです。
全ての力が出そろったところで、問題を解いていきましょう!
(1)物体Aが物体Bから受ける力と物体Bが床Cから受ける力をそれぞれ求めよ。
物体Aが物体Bから受ける力は垂直抗力NA、物体Bが床Cから受ける力は垂直抗力NB′ですね。
では、物体Aと物体Bに働く力について、それぞれつり合いの式を立ててみましょう。
まず物体Aに着目しますね。
鉛直上向きを正とすると、物体Aに働く力のつり合いの式はNA+(-m1g)=0、つまり、NA=m1gですね。
図15 物体Aに働く力
次は物体Bに着目しますよ。
鉛直上向きを正とすると、物体Bに働く力のつり合いの式はNB′+(-NB)+(-m2g)=0、つまり、NB′=NB+m2gですね。
図16 物体Bに働く力
作用反作用の関係からNB=NA=m1gですから、NB′=(m1+m2)gとなるわけです。
(2)物体Aの上から力Fを加えたとき、物体Aが物体Bから受ける力と物体Bが床Cから受ける力をそれぞれ求めよ。
物体Aの上から力Fを加えたとき、物体Aと物体Bと床Cに働く全ての力を書き出しましょう。
図に物体Aから下向きの力Fを書き加えますよ。
図17 物体Aの上から力Fを加えたとき物体Aと物体Bと床Cに働く全ての力
作用反作用の関係から、NA=NBとNB′=NCですね。
続いて、物体Aと物体Bに働く力について、それぞれつり合いの式を立ててみましょう。
まず物体Aに着目しますね。
鉛直上向きを正とすると、物体Aに働く力のつり合いの式はNA+(-F)+(-m1g)=0、つまり、NA=F+m1gですね。
図18 物体Aに働く力
次は物体Bに着目しますよ。
鉛直上向きを正とすると、物体Bに働く力のつり合いの式はNB′+(-NB)+(-m2g)=0、つまり、NB′=NB+m2gですね。
図19 物体Bに働く力
作用反作用の関係からNB=NA=F+m1gですから、NB′=F+(m1+m2)gとなるわけです。
作用反作用の法則と力のつり合いはごっちゃになりやすいです。
分かるようになるまで読み込んでくださいね。
それでは、仕上げに理解度チェックテストにチャレンジです!
作用反作用の法則理解度チェックテスト
【問1】
図1のように、床Aの上に物体Bが置かれて人Cが立っている。
物体Bと人Cの受ける重力はそれぞれ200 Nと500 Nである。
その後、図2のように、人Cが物体Bに上から10 Nの力を加えた。
(1)図1で、床Aが物体Bと人Cから受ける合力は何Nか。
(2)図2で、人Cが物体Bから受ける力は何Nか。
(3)図2で、床Aが物体Bと人Cから受ける合力は何Nか。
まとめ
今回は、作用反作用の法則についてお話しました。
作用反作用の法則は、
- 物体Aが物体Bに力を加える(作用)とき、物体Aは反対向きで同じ大きさで同一作用線上にある力を物体Bから受ける(反作用)。
- 物体同士が接していなくても成り立つ
- 2つの物体に着目したときに成り立つ(力のつり合いは1つの物体に着目する)
作用反作用の法則に例外はありませんよ。
「力」が生じれば(作用)必ずその反作用があり、それは反対向きで同じ大きさの力であることを忘れないでくださいね。
次回は、弾性力とフックの法則についてお話しますね。
こちらへどうぞ。